医学書LABO

医学書に秘められた「ノイズ」を味わう読み方とは?【効率だけでは得られない豊かな学び】

医学書を手にとって、おそらくまず皆さんが感じるのは、

「標準的な診断基準」や「治療プロトコール」「必須の薬剤用量」などの必要な知識を効率よく吸収したい――ということ。

医学部の学生さんや研修医の先生方、そして現場で忙しく働きながら学習を続けている看護師さんや薬剤師さん、その他多職種の医療スタッフの皆さまは、きっとそう感じることが多いのではないでしょうか。

しかし最近、私自身が輸液治療の本を読んだことで、

「医学書は知識の倉庫であるだけではない」という新たな気づきを得ました。ページをめくるうちに、そこには一見“ノイズ”と呼ばれそうな雑多な情報こそが、深い学びとワクワクを運んできてくれる世界があったのです。

本記事では、そんな「ノイズを活かす」読み方について、実際に私が読んだ書籍を代表例に、や臨床現場での活用シーンを交えながらご紹介します。

医学書をもっと効果的かつ効率的に読みたい方、必見です。どうぞ最後までお付き合いください。

【想定読者】

  • 医学部の学生さん: 大学での教科書以外の医学書に挑戦してみたい方
  • 研修医・若手医師の先生方:もっと医学書で効果的に学びたいと思っている方
  • 多職種の医療スタッフ(看護師・薬剤師など): もっと医学書で効果的に学びたいと思っている方

1. ノイズとは何か?医学書に潜む、一見無駄にも見える情報

医学書というと、どうしても「実用的な医学情報」だけに注目が集まりがちです。

しかし、本をじっくりめくってみると、歴史的な背景や著者独自のエピソード、イラストを使ったコラムなど、「回り道」に見える要素が意外とたくさん見つかります。

たとえば、「輸液の基本事項」にフォーカスしたはずの本に、「関連疾患のミニ解説」や「著者の臨床現場での小話」「チーム医療に関するヒント」などがふんだんに盛り込まれていることがあります。

こうした余剰情報は、一見すると「ただの雑談」や「本筋から逸れたノイズ」のように感じられるかもしれません。

しかし、このノイズこそが著者の伝えたい臨床現場のエッセンスや思想のヒントになっていることがあるのです。

あえて違和感を残すことで、読者は「なぜこんな話が挟まっているんだろう?」と疑問を抱き、自分なりの解釈を試みます。

その過程こそが“学び”を深める一歩になっているのだと感じます。

2. 書籍の魅力を際立たせる「作者読み」の効果

著者の経歴や思いを知ることで見える本の意図

私がこの度読んだ『LIVE!! 輸液プラクシス 3つのRで現場に実装 輸液ど真ん中!!!』という本では、単に“輸液の基礎情報”が整理されているだけではありませんでした。

著者の柴﨑俊一医師が、茨城県のひたちなか総合病院で救急・総合内科を立ち上げるに至った背景や、そのなかで培った実戦的ノウハウが“物語”のようにちりばめられているのです。

この本を読んでいると、著者が何を大事にしているのかが、自然と伝わってきます。

たとえば、

英語文献の単なるフローチャートの和訳ではなく、なぜこのフローチャートをデザインし直したのか

どこに患者さんとのコミュニケーションを重視した工夫が隠れているのかといった、著者の再編集や再構成の意図が明確に見えてくるのです。

私はここで、「ああ、これはただの情報伝達ではなく、“考え方”まで伝えようとしているんだな」と感じました。著者の背景や考え方を意識するいわゆる“作者読み”を実践すると、文章の一文一文が、より深みをもって迫ってきます。

ワクワクする瞬間――著者の小さな仕掛けの発見

それは輸液とまったく関係ないように見える「ハッシュタグ付きのミニコラム」だったのですが、その文言に妙に引っかかりを覚えたのです。

「なぜこんなコラムを入れたのだろう?」という疑問から、あらためて著者のあとがきやプロフィールを読み返しました。その結果、「自分の経験談を通じて、臨床現場でのを伝えたい」という狙いがあったのではないかと推測できました。

こうした「一瞬の違和感」や「小さな引っかかり」は、効率重視の読み方では見逃してしまいがちです。しかし、ワクワクした気持ちでページを戻り、背景を探ってみると「ああ、ここが肝だったんだ」と気づく瞬間がありました。これは読書の醍醐味であり、著者のこだわりがキラリと光るところだと思います。

3. 実際の臨床でどう活きる?―使用シーンのリアル

ERの現場でぶつかった輸液の壁

私は救急領域で働いているため、ER(救急外来)に運ばれてくる急患に対して、短時間で適切な輸液管理を判断しなければならないシチュエーションがしばしばあります。とくに研修医のころは、どれだけ勉強しても、いざ患者さんを目の前にすると「どの輸液を優先するのがベストなんだろう?」と迷ってしまうことが多々ありました。

そこに登場したのが、この『LIVE!! 輸液プラクシス』でした。「3つのR」というコンセプトがあり、これは患者さんの状態をシンプルかつ体系的に把握するためのアプローチとして紹介されています。

救急の現場では、状態の評価から治療方針の確定までのスピードが命を左右することがあります。そんなときに、このRを念頭に置いて考えると、自分の頭の中が整理されるのを実感しました。

ノイズが“記憶のフック”に

さらにこの本の面白いところは、一見「余計なトリビア」に見えるコラムやイラストが、実際に記憶を補強してくれる“フック”の役割を果たす点です。

たとえば、臨床現場でふと迷ったときには「あの著者の先生ならこんなときどう考えるだろう?」と頭に浮かぶのです。

そうすると、ただ知識だけでなく、その知識が生まれた「思考プロセス」も一緒に蘇ります。

すなわち、「誰が、どのような経緯と思いを込めて編み出した考え方なのか」というストーリー込みで覚えているので、単なるマニュアル的な暗記とは違った“立体的な理解”へとつながるのです。こういう瞬間こそ、ノイズを排除しない“回り道”読みの真価を感じます。

4. 感情表現を交えて―私が得た“ワクワク”と“衝撃”

著者の工夫を見つけたときの衝撃

先ほど述べたイラストやコラムは、最初に目にしたときは「こんなところにまで気を配っているのか!」と衝撃を受けました。

装丁やレイアウトの凝った本が私は大好きで、「著者がどういう意図でこの図を配置したのか」を想像するだけでワクワクしてきたのです。

医学書でありながら、いわば“エンターテインメント性”を感じさせる作り込み。

それによって、読み進めるモチベーションがどんどん高まりました。書き手の情熱は読者に伝わるのだと、あらためて実感した瞬間でもあります。

「再読したときに腑に落ちる」体験

さらに、いったん読み終えたあとに再度読み返すと、初読では理解しきれなかったページに新しい発見がありました。

最初は理解できなかった臨床例も、後日実際に似たケースを経験してから読むと、不思議なくらいにスルスルと頭に入ってきます。

著者はあえて「読者が一度ですべてを理解しきれないような構成」にしているのではないか、とすら思うほどです。

「いつか役立つタイミングが来る」という信頼のもと、あえてノイズを豊富に盛り込み、読者が“再読”をすることで深まる仕掛けを用意しているように感じました。

5. ノイズを活かす「再読・比較読み」で得られる学び

他書との比較で見えてくる“違い”

実はこの本を読んだあと、私は他の輸液関連書籍もいくつか手に取ってみました。

同じ分野を扱っているはずなのに、著者のレイアウト思想やイラストの多さ、コラムの切り口などは多種多様です。

比較してみると、「あの本ではこういう症例をイラストで説明していたけど、こっちは文章中心だな」という違いが浮き彫りになります。

すると、

「なぜ著者はイラストを多用するのか」

「なぜこの書籍は断固として文章で勝負しているのか」

といった疑問が湧いてきます。そうやって他書との違いを探っていくうちに、それぞれの著者のメッセージ性がさらにクリアになっていくのです。

この比較作業もまた、「ノイズの活用」を考える大きなきっかけになりました。

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自分の臨床メモと結びつける

また、私は普段から自分の臨床体験や学習プロセスをメモしておく習慣があります。

たとえば、「○○という症例で苦戦した」「××という薬剤選択に迷った」といった記録です。

そうしたメモを参照しながら再読すると、初回に気づかなかったノイズがいきなり“核心”に変わることがあります。

以前は見落としていたコラムが、「あ、これまさに先日の症例に活かせるかも!」と光を放つ瞬間があるのです。

これはいわば“後付けの気づき”ですが、読書のタイミングと自分の経験が重なることで、ノイズがノイズでなくなる――まさに繰り返し読むことで得られる“読書の醍醐味”ではないでしょうか。

6. おわりに

私たちは、ともすれば「なんでも最短距離で学びたい」「余分な要素はカットして、早く使える知識だけが欲しい」と思いがちです。

しかし、医学書のように多様な知識や経験が凝縮されたテキストだからこそ、ノイズを意識的に取り込み、何度も読み返す価値があるのだと思います。

一度読んで終わりではなく、経験を積んだあとに再読し、他の書籍と比較しつつ、さらに深い解釈を行う―そうした姿勢こそが、「考える医療者」として成長するための大きな鍵になるはずです。

私自身、今後もこの“ノイズを活かす”読み方を実践し、疑問にワクワクしながら学びを深めていきたいと思います。

「医学書が単なる情報源から、思考のパートナーへ」

この感覚を、ぜひ多くの方にも味わっていただければ幸いです。

 

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