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ノルアドレナリンを軸に、ドブタミン・アドレナリンをどう足すか

ノルアドレナリンの組成と初期投与量、そしてドブタミン・アドレナリン・バソプレシンをどう足していくかを整理します。日々の当直で「次の一手」に迷わないための考え方としてお読みください。

1. ノルアドレナリンは「1つの型」を決めて覚える

ショックに対する昇圧の第一選択は、施設や病態を問わずノルアドレナリンです。対談でも両施設に共通していたのは、組成(希釈濃度)を院内で1つに統一しておくという考え方でした。急いでいる場面で「何アンプルを何mLに溶くか」が人によって違うと、投与量がずれて危険だからです。

対談で挙がった組成の例

  • 秋田大学(佐藤先生):5アンプル(5mg)を総量50mLに調製し、全員がこの組成で統一している
  • 広島(三谷):3アンプル(3mg)を総量50mLに調製する施設が多い
  • 高用量が必要なときは、ICUで15アンプル(15mg)を総量50mLの5倍濃度に置き換える

組成が違えば、同じ流量(mL/時)でも投与量(γ=μg/kg/分)は変わります。だからこそ、自施設の換算を1つだけ暗記しておくと、現場でガンマ計算に固まらずに動けます。下表は体重50kgを目安にした換算の一例です(数字は施設の組成により異なりますので、必ず自施設のものをご確認ください)。

組成(総量50mL) 濃度 0.1γの目安(体重50kg)
3アンプル / 50mL 60μg/mL 約5mL/時
5アンプル / 50mL 100μg/mL 約3mL/時
15アンプル / 50mL(高用量用) 300μg/mL 約1mL/時
現場のピットフォール ― ガンマ計算で固まる

血圧が上がらず焦っているときに、その場でガンマ計算を始めると手が止まります。平時に「レシピ」と「体重ごとのおおよその換算」を1つ決めて覚えておくことが、いざというときに動けるかどうかの分かれ目になります。

2. 初期投与量と、増量の天井

対談では、初期投与量の考え方にも触れました。0.05〜0.1γ前後から開始し、血圧が明らかに低いときは0.1γ程度からしっかり始める、という進め方が両施設に共通していました。天井は症例によりますが、0.5〜0.6γ程度まで上げることもあります。

一方で、ノルアドレナリンを上げても反応が乏しいときは、輸液が足りているかを必ず見直します。血液分布異常性ショックでは血管が開いているだけでなく、相対的に容量も不足していることが多いためです。薬だけを上げ続けて輸液を置き去りにしない、という点は繰り返し強調されました。

末梢ルートからの開始について

  • 中心静脈路の確保を待たず、まずは太めの末梢ルートからノルアドレナリンを開始してよいという考え方が近年は一般的です
  • 遅れなく昇圧を始めることを優先し、必要に応じて中心静脈路へ移行します

3. ノルアドレナリンで足りないとき ― バソプレシンを足す

ノルアドレナリンを増やしても血圧が維持できないときは、バソプレシン(ピトレシン)の併用を検討します。ノルアドレナリンを際限なく増量するのではなく、一定量に達した段階で作用機序の異なる薬を足す、という発想です。

文献ポイント ①(Surviving Sepsis Campaign 2021 ガイドライン)
「敗血症性ショックに対する第一選択の血管収縮薬はノルアドレナリンです。増量のみに頼らず、一定量に達した段階でバソプレシンの併用を検討します。十分な輸液と血圧が得られても心機能低下による低灌流が続く場合は、ドブタミンの追加、またはアドレナリン単剤を考慮します」

4. ドブタミンとアドレナリンの「出しどころ」

対談で時間を割いたのが、ドブタミンとアドレナリンをどんな場面で使うか、という点でした。ノルアドレナリンとバソプレシンで血管の緊張(後負荷)を補っても循環が維持できないとき、次に考えるのは心臓のポンプ機能です。

ドブタミン

EF(左室駆出率)低下がありそうなとき、いわゆる敗血症性心筋症などで心拍出量が落ちているときに追加します。ただし頻脈を招きやすい点が悩ましく、頻脈が併存する症例では使いにくくなります。

アドレナリン

ノルアドレナリンやバソプレシンでも維持できない難治性ショックや、心停止後症候群で循環がきびしいときに登場します。β作用があるため、通常はドブタミンと併用しません。

佐藤先生は、敗血症で血圧が下がってきたときにエコーを当て、心機能が落ちている(敗血症性心筋症)と判断したらドブタミンを足す、という流れを紹介されました。三谷からも、輸液が十分に入っているのに血圧が下がるときは、心機能を確認してドブタミンを加えるかどうかでアクションが変わる、という点を補足しました。

文献ポイント ②(Sato R, ほか. 敗血症性心原性ショックのレビュー, 2025年)
「敗血症では可逆性の心筋障害(敗血症性心筋症)を生じることがあり、輸液と血圧が十分でも低灌流が続く場合は心原性の要素を疑います。ガイドラインはドブタミンの併用またはアドレナリンを推奨していますが、強心薬の有効性は依然として不確実で、高用量の昇圧薬・強心薬に頼る状態は予後の悪化と関連します
大切な前提 ― 薬はあくまで時間かせぎ

カテコラミンは循環を維持するための時間かせぎです。出血源のコントロールや感染源のコントロールといった根本治療が最優先であることは、対談でも繰り返し確認されました。強心薬を足しても、根本原因が解決しなければ効果は限られます。

この記事のまとめ

  • ノルアドレナリンは組成を院内で1つに統一し、体重ごとの換算を1つだけ暗記しておく
  • 初期は0.05〜0.1γ前後から開始。反応が乏しいときは輸液が足りているかを必ず見直す
  • 末梢ルートからでも遅れなく開始してよい
  • ノルアドレナリンで足りなければバソプレシンを併用する
  • 心機能低下(敗血症性心筋症)にはドブタミン、難治例や心停止後症候群にはアドレナリンを考える
  • 薬は時間かせぎであり、根本治療(ソースコントロール)が最優先

後編では、これらの薬をどう評価し、どう減らして(離脱して)いくか、そして難治性ショックでのモニタリングと機械的循環補助(MCS)について整理します。

引用文献

  1. Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, ほか. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Intensive Care Med. 2021;47(11):1181-1247. https://doi.org/10.1007/s00134-021-06506-y
  2. Sato R, Hasegawa D, Guo S, ほか. Sepsis-induced cardiogenic shock: controversies and evidence gaps in diagnosis and management. J Intensive Care. 2025;13(1):1. https://doi.org/10.1186/s40560-024-00770-y

※引用文献はPubMedで検索・確認しました。要点は原著の趣旨を日本語で要約したものです。実際の投与量・組成は各施設の基準および最新の添付文書・ガイドラインをご確認ください。

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