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【2026年7月リアルタイムセミナー】心原性ショックの評価と治療の総まとめ!

📩 7月のテーマ「ショック」、その集大成

7月のセミナーはひと月を通して「ショック」がテーマでした。その最終回となるリアルタイムセミナーでは、ショックの中でも特に個別具体的で対応の難しい心原性ショックの診断と治療を深掘り。後半は、実際の心エコー所見を見ながら5症例を読み解いていきました。当日参加できなかった方も、この記事でじっくり振り返っていきましょう。

皆さん、7月のリアルタイムセミナーもお疲れ様でした!

当日は僕の家の近くで花火大会をやっていて、時々「ボン」と音が入っていたかもしれません。聞こえていたら、それはそれで夏の風情ということで(笑)。

この記事を読んでくださっているあなたは、リアルタイムで最後まで残ってくださった方かもしれませんし、アーカイブで追いかけてくださっている方かもしれません。

どちらの方にも、当日の学びがぎゅっと伝わるようにまとめてみました。前半は心原性ショックの総論から治療・デバイス・カテコラミン・呼吸管理まで、後半は心エコー講義です。


今日のゴール ── 4つのステップで心原性ショックに立ち向かう

📋 前半パートの4つの目標

  1. ショックを認知する(そもそも心原性ショックかを見抜く)
  2. 重症度を評価する(今、どの段階にいるのか)
  3. 循環をどう補助するか(薬剤・デバイスの選択)
  4. 呼吸への介入も、実は循環への介入(見落とされがちな視点)

そもそも心原性ショックとは

心原性ショックは、ポンプ機能の急な低下によって全身の組織灌流が破綻し、臓器障害をきたす致死的な状態のことです。心臓の問題で全身に血液を送れなくなり、酸素が不足する。ポイントは、血圧が低いことが本体ではなく、臓器灌流が維持できているかというところです。

ICUに入るような心原性ショックの9割以上は、今回のテーマであるカテコラミンを扱うことになります。それだけ管理しても死亡率は30〜50%に達する、ショックの中でも重篤な病態です。

⚠️ 血圧が正常でも、ショックは否定できない

ショックの重症度分類で最重症を「4」とすると、軽症〜中等症の「1・2」の段階では収縮期血圧は正常です。つまり、血圧が下がっている時点で、すでにショックは進行しているということ。初期段階を血圧だけで拾おうとすると必ず出遅れます。

心原性ショックの4分類

ショックを認知したら、心原性ショックの原因を鑑別していきます。大きく4つです。

💡 心原性ショックの4つの原因

  • ACS(急性冠症候群):心筋梗塞など
  • ADHF(急性非代償性心不全):慢性心不全がベースにあり、非代償化して血圧が下がる
  • 弁膜症・機械的合併症:構造の異常によるもの
  • 肺塞栓・肺高血圧(右心不全):ややマニアックだが管理が難しい

🔑 1つに限定しないこと。「ACS(STEMI)だ」とわかっても、そこに弁膜症などが合併することがあります。


第1章|認知と初期対応 ── 見て、聞いて、感じて

心原性ショックは、酸素の需給バランスが破綻する原因が「心臓」にある状態です。ベッドサイドでは見て・聞いて・感じて評価します。

📋 身体診察の3つの窓

  • 見る:末梢のチアノーゼ・蒼白(循環不全)、頸静脈の怒張(前負荷が戻れない=心原性・閉塞性)
  • 聞く:心雑音(MR・AR・ASなど循環不全をきたす弁膜症)、水泡音(肺水腫)
  • 感じる:脈のリズム・不整(不整脈の有無)、CRT(毛細血管再充満時間)

全身の循環が保たれているかは、3つの窓=意識(脳)・尿量(腎)・皮膚(末梢)で見抜きます。数値でより具体的にすると──

📊 循環不全を示唆する4つの軸(いずれか異常があればショックとして対応)

  • CRT > 2秒
  • 尿量 < 0.5 ml/kg/h(50kgなら1時間25ml未満=乏尿)
  • 乳酸(ラクテート)≧ 2.0(代謝性アシドーシス)
  • 意識障害・不安

心原性ショックは「冷たい」ことが多い

身体診察で特に大事なのが、温かいか・冷たいか。温かい(ウォーム)なら血液分布異常性ショック(敗血症・アナフィラキシー)を、冷たい(コールド)なら重症の心原性ショックを考えます。心原性ショックの特徴を他のショックと比べると──

💡 心原性ショックの特徴的所見

  • 頸静脈の怒張(怒張するのは閉塞性と心原性だけ)
  • 水泡音(肺水腫になりやすい)
  • 末梢冷感が強い
  • 心雑音(重症のMR・ASなどがあれば)

CO = SV × HR という基本の式

ショックは心拍出量(CO)が足りていない状態です。CO=1回心拍出量(SV)× 心拍数(HR)。収縮力の低下でSVが減るのはイメージしやすいですが、徐脈(HR30など)でもCOは落ちるのがポイント。

💡 

「HR100でなんとか循環を保てていた人が、不整脈でHR50になった瞬間、乳酸が上がって末梢が冷たくなる──そういうことがあるんですよね。この場合は『HRが低いこと』が問題。だからペースメーカー的なデバイスを入れたり、β刺激薬でHRを上げたりする介入が、ショックの治療になり得る。『心臓を叩く』というと収縮力を上げるイメージですが、HRを上げるのも立派な介入なんです。」

ノーリア・スティーブンソン分類

心不全・心原性ショックで最もよく出てくる分類です。末梢が冷たいか(Cold/Warm)うっ血・肺水腫があるか(Wet/Dry)の2軸で見ます。

⚠️ Wet & Cold は最重症

末梢が湿って冷たく、うっ血もある「Wet & Cold」は最も重症の病態。これを見た瞬間にマインドを切り替え、すぐに循環器内科・心臓血管外科をコール。まずはOMI(O2・モニター・ルート)+12誘導心電図・心エコーで評価に入ります。


第2章|重症度評価 ── 数字と見た目で決めるA〜Eステージ

フォレスター分類、クリニカルシナリオ分類、キリップ分類、EF……重症度の指標はたくさんありますが、それぞれ一長一短です。特に既存の分類は「時間軸で変化すること」「Impellaなどの機械的補助循環(MCS)が組み込まれていないこと」が弱点でした。そこで出てくるのがA〜Eの5段階分類(SCAI分類)です。

📋 A〜Eステージ(身体診察・採血・血行動態の3つで判定)

  • A(At risk):末梢冷感なし・乳酸正常・血圧正常。ショックになりそうな段階
  • B(Beginning):末梢循環不全はないが、相対的に高血圧・頻脈で代償。肺の湿性ラ音や頸静脈圧上昇が出始める
  • C(Classic):末梢循環不全があり、輸液以上(カテコラミン等)の介入が必要。乳酸上昇
  • D(Deteriorating):さらに進行し、デバイス挿入を本格的に検討
  • E(Extremis):CPRが必要/心停止切迫。ECMO+Impella、ECMO+IABPなど複数サポートが必要な最重症

🔑 詳しい計算は不要。数字と見た目だけで判断できるのが良いところ。だいたいC・D・Eが真の心原性ショックに該当します。

そして真の心原性ショックは、時間とともに重症度が動くのがポイント。「救急隊接触時はB、病院到着時はC、ICU入室時にはVfでE」というように、時系列で捉えるのがわかりやすいんですね。

結局、何を見ればいい? ── 低心拍出とうっ血

総論をぎゅっとまとめると、評価すべきは「低心拍出(Cold)」と「うっ血(Wet)」の2つです。

💡 低心拍出を示す4つの状態+脈圧

  • 意識障害・頻脈・尿量低下、そして脈圧が小さい
  • 脈圧(収縮期−拡張期)は1回心拍出量の大きさを反映。脈圧が小さい=心原性・閉塞性ショックを疑う(目安は30)
  • これらが揃えば、低心拍出による臓器不全が起きている

あわせてうっ血(息切れ・頸静脈怒張・浮腫)も評価。低心拍出とうっ血の両方を、7つのポイントで経時的に見ていきます。


第3章|評価と同時に進める介入

救急では評価と介入を同時に進めます。まずはOMI(O2・モニター・輸液)+12誘導心電図・心エコー。この心電図が、次の介入を大きく左右します。

⚠️ 酸素と輸液は”慎重に”

  • 過剰な酸素投与は心筋の酸素消費を増やす。目標を決めて投与する
  • 過剰な輸液はうっ血を助長。うっ血所見を評価しながら慎重に

✅ ルート・採血・心電図の実務ポイント

  • ルートはなるべく太いものを確保
  • Aライン・血ガス穿刺は、循環器内科と事前相談を。心筋梗塞でカテをする場合、右手からいくのか鼠径からいくのかで、刺してほしくない部位があることも
  • 昇圧剤(ノルアド少量)は末梢からでも開始可。ただし高用量化に備えて中心静脈確保の準備を
  • 12誘導心電図はSTEMI・新規ブロック等を確認し、経時的に何度も。シールを貼ったまま再検できるようにしておく

💡 

「専門家を呼ぶ閾値を決めておくのも大事ですが、そうは言っても、相談するか迷った時点で、もう相談を要する段階なんですよね。コンサルトのときは重症度・今の乳酸・血圧を簡潔に伝えると、相手も動きやすいです。」


第4章|原因別の治療 ── 「何が原因か」で薬もデバイスも変わる

心原性ショックの治療は、原因を大きく3つに分けると整理しやすくなります。

📋 3つの病態を並行して鑑別

  • 心筋性(心筋梗塞・心筋炎など):心収縮そのものの問題
  • 構造の異常(弁膜症・中隔欠損など):外科的治療が早期に必要 → 心臓血管外科へ
  • 不整脈(VT・洞不全・完全房室ブロックなど):除細動・ペーシングを優先

🔑 これらは同時に起こり得ます。そして背景にACSが隠れていないかは、根本治療を左右する最重要ポイント。

ACSが原因なら、とにかく早期再灌流

ACSが原因の心原性ショックでは、責任病変への早期PCIが極めて重要です。STEMI・NSTEMIは近年でも死亡率が高い病態。来院から90分以内のPCIを目標に、多枝病変でもまず責任病変を確実に開通させます。どこが責任病変かは、心電図・心エコーで推察してアプローチします。

ADHF・たこつぼ ── カテコラミンが逆効果のことも

慢性心不全がベースのADHFでは、収縮力を高める強心薬を使うことがあります。ただしここがACSとの違いで──

⚠️ カテコラミンが病態を悪化させる場面

  • ACS:カテコラミン投与が酸素需要を増やしてしまう
  • たこつぼ型心筋症:カテコラミンが強く出て機能低下しているため、投与でさらに悪化することも。むしろβ遮断薬や、収縮を上げず血圧だけ上げるα刺激薬を使う場面もある

原因によってアプローチが真逆になる。何が原因かを見極めてから薬剤を選ぶのが鉄則です。

右心不全・肺高血圧 ── 最も管理が難しい

急性右心不全では、右室に血液を溜められなくなるため輸液がまず一つのポイント。右室が拡大すると左室の前負荷を落とし、両心不全に陥る重篤な状態になります。

💡 右心不全へのアプローチ

  • まず輸液で前負荷が足りていなければ補う
  • 肺血管抵抗が高すぎるならNO吸入で肺血管抵抗を下げる
  • 収縮補助としてノルアドレナリン・ドブタミン、それでも回復しなければMCS(ECMO等)を検討

第5章|機械的補助循環(MCS)── IABP・Impella・VA-ECMO

救急で押さえておきたいMCSは、IABP・Impella・VA-ECMOの3つ。それぞれ一長一短です。

📋 3つのデバイスの特徴

デバイス 仕組み ポイント
IABP 大動脈内バルーンが収縮期に縮み後負荷↓、拡張期に膨らみ冠血流↑ 挿入リスクは大きくないが、近年ルーチン使用は非推奨
Impella 左室から順行性にポンプで送血。左室の負担を下げる 生理的で理にかなうが、溶血・出血リスクあり
VA-ECMO 静脈脱血→酸素化→動脈送血。心臓も肺もサポート 最もサポートが強いが、逆行性送血で左室後負荷↑・うっ血/肺水腫のリスク

昔は心筋梗塞に生理学的に良さそうということでIABPが多用されましたが、現在はルーチン使用は非推奨。Impellaの台頭により、使う場合はImpellaが選ばれることが増えています。

💡 VA-ECMOは「入れて終わり」ではない

VA-ECMOは逆行性送血のため、左室にとっては強い血流が邪魔になり、うっ血・肺水腫をきたすことがあります。そこでImpella・IABPを併用してLV(左室)をアンローディングし、ECMOの弱点を打ち消します。

そして最も大事なのは出口戦略。「なぜ導入するのか」「どうなったら離脱できるのか」を導入前から考える。心筋梗塞のPCI後に心機能が戻るまでの時間稼ぎ、中毒による致死的不整脈が治まるまでの橋渡し──そんな先のプランを持って入れます。


第6章|カテコラミンを深掘りする

薬を入れる前に、何のために入れるのかを言語化しましょう。心拍数は速いか遅いか/不整脈を整えるためか/収縮力は強いか弱いか/前負荷(輸液)は足りているか/後負荷はどうか。この4つの軸で考えます。

📋 主なカテコラミン・強心薬

  • ノルアドレナリン:α1作用が強く血圧を上げる。心拍数上昇は軽度、不整脈リスクも低い。血圧が低いときの第一選択(0.1γ程度から開始することが多い)
  • ドブタミン:強心薬。心収縮が悪いときに。ただし不整脈リスク、ACSでは酸素消費増、β作用で反射的に血圧が下がりやすくノルアドと併用が多い
  • アドレナリン:α・βとも強力で収縮も血圧も上げるが、不整脈になりやすい。適応を考えて
  • ドパミン:最近はもう使わないと考えてよい
  • ミルリノン:α/βを介さないPDE阻害薬。末梢・肺血管を拡張し、β刺激を介さず強心。ADHF・肺高血圧・β遮断薬内服中に有用。血圧が下がりやすくノルアドと併用、腎機能低下時は蓄積に注意

💡 

「昇圧と強心を1つのカテコラミンだけで両立させるのは難しいことが多いので、併用を考えます。原則は中心静脈からですが、ショック初期のノルアドは末梢からでもOK。だいたい0.1〜0.2γくらいを半日〜1日なら許容される、と言われています。ノルアドだけは早めに始めていい、と覚えておいてください。」


第7章|呼吸への介入も、循環への介入

心原性ショックというと循環のイメージですが、肺と心臓は密接に関わっています。自発呼吸(陰圧)と陽圧換気(人工呼吸)では、前負荷・後負荷が大きく変わります。

📊 自発呼吸 vs 陽圧換気

  • 自発呼吸(胸腔内陰圧):静脈還流↑、左室後負荷↑(左室には不利)
  • 陽圧換気(胸腔内陽圧):静脈還流↓(血圧が下がりやすい)、左室後負荷↓(左室には有利)。ただし右室は圧に弱いため、右心不全では不利

だから、呼吸が悪くて心不全だろうと安易にNPPVをつけると、気胸や喘息の患者さんでは痛い目を見ることがあります。起坐呼吸で搬入される患者さんは、上体を起こすと心臓に戻る血液が減って楽になる病態=ウェットの可能性が高いサインとして捉えられます。

⚠️ NPPVのピットフォール ── “粘りすぎ”に注意

NPPVをつけると酸素化が保ててる気がしてしまうもの。ですがCO2貯留・呼吸筋疲労・強い努力呼吸があれば、挿管しないと患者さんに良くないことが起きます。心不全では基本NPPVですが、30分を目安に改善がなければ撤退して人工呼吸管理へ。ハイフロー(HFNC)はNPPVで不穏になる場合などの選択肢ですが、エビデンス上は基本NPPVが望ましいです。気管挿管では血圧低下が一番怖いので、ノルアドをショットで準備し、ケタミン等を使う(4月・6月のセミナーも復習を◎)。


後半|臨床検査技師・イさんの心エコー講義 ── ビジュアルEFとアシナジー

🎤 スペシャルゲスト

りんくう医療センター 臨床検査技師・井伊さん。「見た目の感覚でEFを捉えるvEF」と「壁運動異常」を、心エコーのアプローチから5症例まで、実際の動画所見を交えて解説してくださいました。

EF(左室駆出率)とは

EFは左室駆出率で、収縮性の指標。正常値は55〜70%です。拡張末期容積に対する1回拍出量の割合ですが、本来は収縮性と後負荷のバランスで決まる負荷依存性の指標である点に注意。たとえばMRがあると後負荷が下がり、EFが過収縮に見えることがあります。

✅ ビジュアルEFの目安(収縮期に壁が厚みを増すか)

  • EF 60%以上:壁が厚くなり内腔がしっかり潰れる=正常収縮
  • EF 40〜45%:軽度〜中等度の収縮低下(壁の厚みの増しがやや弱い)
  • EF 30〜35%:中等度〜高度の収縮低下(アシナジーが出てくる)
  • EF 15%:高度収縮低下(収縮期も拡張期も内腔がほぼ変わらない)

🔑 細かい数字より、全体的に動きがいいか悪いかを大まかに捉えるのがコツ。

心エコーのアプローチと冠動脈の支配領域

心臓は肋骨のわずかな隙間からセクタプローブで”覗き見”します。傍胸骨・心尖部から、長軸像・短軸像・三腔像・四腔像・二腔像と観察。各断面でどの壁の動きが悪いか(アシナジー)を見ることで、どの冠動脈の病変が疑わしいかを推定できます。

💡 冠動脈の支配領域

  • 右冠動脈(RCA/#1〜4):下壁を養う
  • 左前下行枝(LAD/#6〜10):中隔〜前壁、心尖部
  • 回旋枝(LCX/#11〜15):側壁・後壁

🔑 冠動脈の走行に合わないアシナジーがある場合は、心サルコイドーシスやファブリー病など他の心筋症も鑑別に。

💡 イさんのワンポイント|アシナジーの見つけ方

「どこが悪いか分かりにくいときは、見たいところ以外を手で隠して、他の部位と壁の厚みの増し具合を比べてみてください。ぐっと見やすくなります。」

5つの症例で読み解くアシナジー

📋 症例①|50代男性・VF蘇生後

胸痛・呼吸困難から意識消失、初期波形VF。心電図でaVL・V2〜V5のST上昇、Ⅲ誘導ST低下、V1〜V3のQSパターン → LAD基部の病変を疑う。ECMO+Impella管理下のエコーで中隔〜前壁がディスカイネシス、ビジュアルEF 15%程度。CAGでLAD #6に99%狭窄、PCI施行。

📋 症例②|高度房室ブロック+下壁

P波はあるがQRSが続かない高度房室ブロック。Ⅱ・aVF・V1のST上昇傾向 → RCA病変を疑う。下壁の動きがやや悪いが全体は代償しEF 50〜55%。RCA #1に99%狭窄。近位部のため右室梗塞も評価すると右室基部にも壁運動異常。房室ブロック・洞不全・低心拍出・ベツォルト–ヤーリッシュ反射による徐脈/血圧低下・後乳頭筋断裂によるMRなどの合併症に注意。

📋 症例③|70代男性・回旋枝病変

Ⅱ・Ⅲ・aVF・V5・V6でST上昇、aVL・V1〜V3でST低下。V1〜V3の高R波+ST低下は”裏面から見た後壁の対側性変化” → LCX病変を疑う。後壁・側壁にアシナジー、EF 45〜50%。LCX #13に99%狭窄、PCI。LCXでは左室自由壁破裂・後乳頭筋断裂(RCAまたはLCXの一枝支配)による急変リスクに注意。

📋 症例④|30代女性・劇症型心筋炎

数日前からの胸痛、当日頭痛・倦怠感。幅広QRS・頻脈・QT延長 → みるみるTdP(トルサード・ド・ポアンツ)→ VFへ。DC・挿管・ECMO確立。エコーでは前壁にアシナジー、当初EF 40% → ICUではさらに悪化しEF 20%程度。CAGは有意狭窄なし、心筋生検でウイルス性劇症型心筋炎と診断。ICU帰室後もV1〜V3のcoved型ST上昇など急変リスクが残存。

📋 症例⑤|70代女性・”心膜液”の裏に大動脈解離

社交ダンス中の胸痛・嘔吐、2週間後に心膜液貯留で紹介、外来を歩いて来院。Ⅱ・Ⅲ・aVFのST上昇+異常Q波、二相性T波で下壁を中心にアシナジー、バルサルバ洞・大動脈拡大、EF 40%弱。よく見るとARも。RCA入口部からの閉塞+AR+上行大動脈拡大の組み合わせ → PCI後のCTでスタンフォードA型解離が判明し緊急手術に。心膜液・上行大動脈拡大・RCA/LMT領域のアシナジーがそろえば解離も鑑別に。

✅ イさんのまとめ

  • ビジュアルEFは主観的で明確な正解はない。とにかくたくさんの動画を見て目を養う
  • 細かい数字より、大まかに動きがいいか悪いかを捉える
  • アシナジーに迷ったら見たい所以外を手で隠して壁の厚みを比べる
  • 冠動脈走行に合わないアシナジーは心筋症も鑑別
  • 心エコーレポートにはEFも動画も載っている。自分の目で確かめながら目を養う

用語のアップデート ── “心嚢水”→”心膜液”、”疣贅”→”ベジテーション”

セミナー後の質疑で盛り上がったのが、心エコー界隈での用語の変化です。心原性ショックの前半で触れた「呼吸苦」「ショックバイタル」の話にも通じますが、正確な用語を使うことはプレゼンの質にも直結します。

💡 心エコーの用語アップデート

  • 心嚢水・心嚢液 → 心膜液に統一
  • 後壁 → 下側壁、側壁 → 前側壁(アンテロラテラル)など壁の名称も変化(本記事では馴染みのある後壁・側壁で解説)
  • 疣贅(ゆうぜい)→ ベジテーション。心エコー界隈で”疣贅”と言うと吊るし上げに……(減点されてしまうそうです)
  • 略語の注意:MVP(弁形成術後か逸脱か)、PE(肺塞栓か心膜液か)など、文脈で意味が変わる

今月も、たくさん一緒に学べました。

心原性ショックは対応の難しい病態ですが、認知 → 重症度評価 → 原因別の治療 → 呼吸への介入という流れを意識すると、ぐっと立ち向かいやすくなります。そして後半のイさんの心エコー講義で、エコーに親近感を持てた方も多いのではないでしょうか。ぜひエコーレポートを見たり、実際に当ててみたりしてみてください。

改めて、素晴らしい講義をしてくださった井伊さん、本当にありがとうございました。

質問・感想は、マシュマロやオープンチャットでいつでも募集しています。僕やイさんからお答えできると、より双方向なセミナーになりますので、ぜひ気軽にどうぞ◎ 8月は心電図を扱う予定です。一緒に学んでいきましょう。それでは皆さん、お疲れ様でした!