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今回のテーマは、ショックの治療で頻繁に登場するカテコラミンの基本を理解することです。ノルアドレナリンやドブタミンといった薬剤を「なんとなく」ではなく、受容体と血圧の式から理にかなって使えるようになると、ショックへの対応がぐっとスムーズになります。
今日の目標
- カテコラミン受容体(α1・β1・β2)の作用を血圧の式から理解する
- ノルアドレナリン・アドレナリンの実際の組成と投与のコツを説明できるようになる
1. ショックの治療原則の中のカテコラミン
ショックの治療は大きく「入れる・閉める・叩く」を並行しながら、気管挿管の準備やショックの根本治療を進めていきます。その中で、循環を支えるために登場するのがカテコラミンです。ノルアドレナリンのような血管収縮薬や、ドブタミンのような強心薬などをまとめてカテコラミンと呼び、これらをいかにうまく使うかが重要なポイントになります。
2. カテコラミン受容体の基礎 ― α1・β1・β2
救急の現場で押さえておくべき受容体は、この3つです。
血管を収縮させる
心収縮力を高める
血管を拡張させる
ショックで何度も登場する血圧の式で考えると、受容体の作用が理にかなって見えてきます。
血圧を規定する式
- 血圧 = CO(心拍出量)× R(血管抵抗)
- CO = SV(1回心拍出量)× HR(心拍数)
例えばα1で血管抵抗(R)を上げれば血圧は上がります。一方で血管が収縮すると後負荷が高くなるため、1回心拍出量(SV)はむしろ少し減ります。体の恒常性の視点でも、血圧を上げる要因がグッと働くと、それ以外の部分では血圧を下げる方向に反応してバランスを取ろうとします。パラメーターがどう動くかをセットで考えるとイメージしやすくなります。
3. 各カテコラミンの作用
受容体の基本がわかると、ノルアドレナリン・ドブタミン・アドレナリン・ドーパミンがどう作用しているかも整理できます。
ドーパミンは容量依存性にαやβの作用が変わって使い方が難しく、不整脈の頻度も高めるため、実臨床で使う機会はあまりありません。まずは学習コストを掛けず、ノルアドレナリン・アドレナリン・ドブタミンの3つを意識すれば十分です。
4. ショックでのカテコラミンの使いどころ
心原性ショックの昇圧や、有効循環血液量減少性・血液分布異常性ショックで輸液をしても循環が保てない場合に、カテコラミンの出番になります。敗血症などではまず輸液負荷を行います。
輸液負荷の目安
- 敗血症では3時間以内に 30 mL/kg を一つの目安にする
- 腎不全・心不全がある患者では、この量まで入れると肺うっ血をきたすことがある
- そのため早期からノルアドレナリンなどの併用を考慮する
5. 血管収縮薬の使い分け
敗血症のガイドラインでも学んだとおり、基本の順番はシンプルです。
使い分けの原則
- 第1選択:ノルアドレナリン
- 第2選択:バソプレシン
- ドパミンは不整脈を増やすため、まず使わない
- ドブタミン・アドレナリンはβ作用を持つ。敗血症性心筋症などで心収縮力が落ちている場合に理にかなう
- ノルアドレナリン・バソプレシン・ステロイドを使っても循環維持が困難なら、α・βの強い作用を狙ってアドレナリンを使うこともある
手数を増やす意味でも選択肢を知っておくことは大切ですが、まずはノルアドレナリンを使えるようになるのが一番大事です。
6. ノルアドレナリンの実際の使い方
カテコラミン投与では「ガンマ計算をしましょう」とよく言われますが、実際には計算する時間がないタイミングも多いものです。ここでは広島大学のICUで使われている組成を紹介します。
広島大学ICUの組成(例)
- ノルアドレナリン3アンプルを生食でトータル50 mLに伸ばす
- 50 kgの患者なら5 mL/hから開始 → 約 0.1 γでスタート
- 0.1 γは麻酔科領域で「初期利用」と呼ばれ、効果を見るためにしっかり入れる量
- 教科書によっては 0.05 γ 開始とあるが、当院では少し多めの 0.1 γ から始める指導が多い
シリンジポンプがすぐ準備できない場面では、生食100 mL に1アンプルを混注し、3秒に1滴(およそ 60 滴/時)で落とすと約 0.2 γになります。急ぐ時はしっかり投与量を入れる、という観点で妥当な使い方です。
最近のガイドラインや研究では、末梢からのカテコラミン投与も比較的安全とされます。0.2 γ程度まで・1日半くらいまでならある程度安全に投与できます。血管外漏出を減らすため、肘の近くなど、なるべく太い末梢静脈からアプローチしましょう。
ノルアドレナリンを使っても血圧が維持できない場合は、バソプレシンやヒドロコルチゾンの出番になります。
7. アナフィラキシーとアドレナリン
「CT撮影後に呼吸困難」といった病歴では、まずアナフィラキシーを疑います。この時のアドレナリンは静注ではなく筋注です。
アナフィラキシーでのアドレナリン
- 成人は最大 0.5 mg までしっかり筋注する(近年のメッセージ)
- 症状が遷延する場合は5分おきに追加投与
- それでも改善しなければ持続静注も考慮する
- β遮断薬・降圧薬の使用歴があれば、グルカゴンのIVも選択肢(異なる機序での治療)
アナフィラキシーショックは有効循環血液量の低下も原因になります。アドレナリンの筋注だけで血圧が上がらない時は、しっかり輸液することが重要です。
持続静注の組成も、ノルアドレナリンと似た考え方で作れます。
アドレナリン持続静注の組成(例)
- 1アンプルを生食100 mLに入れ、3秒に1滴で 約 0.2 γ
- もう少しゆっくり行きたい時は生食500 mL に溶いて1秒に1滴
- 輸液をしながら持続静注する視点でおすすめの組成
まとめ
- 押さえるべき受容体は α1(血管収縮)・β1(心収縮力↑)・β2(血管拡張)の3つ
- 血圧 = CO × R、CO = SV × HR。受容体作用はパラメーターの動きで理解する
- ドーパミンは不整脈が多く使いにくい。まずはノルアド・アドレナリン・ドブタミンを意識
- 血管収縮薬は第1選択ノルアドレナリン、第2選択バソプレシン
- ノルアド:3A/生食50でトータル、50kgに5mL/hで0.1γ開始。急ぐ時は生食100に1A・3秒1滴で約0.2γ
- 末梢投与も0.2γ・1日半程度なら比較的安全。太い静脈から
- アナフィラキシーはアドレナリン筋注(成人最大0.5mg)+しっかり輸液





