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2026年7月のQラボオンラインアーカイブセミナーその1です!
緊急対応中のショック患者さんでは、ルート確保がとても大事になりますよね。その中でも今回は、骨髄路の穿刺についてぎゅっとまとめてお話ししていきます。
まず、こんな場面を想像してみてください。外傷患者さんの診療中、あなたはリーダーとして「モニター装着と静脈路確保をお願いします」と指示を出しました。
すると看護師さんから「末梢静脈路が確保できません…」の一言。ショックの患者さんは血管が虚脱していて、ルートを取るのが本当に難しいんですよね。ここで頭が真っ白になってしまうと、診療は前に進みません。そこで思い出してほしいのが、輸液路の確保には優先順位がある、ということです。
💡 今回の到達目標
- 緊急時に輸液が必要な場合の、輸液路の優先順位を説明できるようになる
- 骨髄針の穿刺手技のポイントを押さえる
- 「末梢が取れない」場面で、迷わず次の一手を出せるようになる
0:58輸液路の確保には優先順位がある
緊急時の輸液路の優先順位は、JATEC改訂第6版に記載されています。成人と小児で少し違うので、分けて押さえておきましょう。
📋 緊急時の輸液路の優先順位(JATEC 改訂第6版)
- 成人:① 末梢静脈路 → ② 骨髄路 → ③ 中心静脈路(大腿・内頸・鎖骨下)→ ④ カットダウンによる末梢静脈路
- 小児:① 末梢静脈路 → ② 骨髄路(よりシンプル!)
ポイントは、上位から順に選択して、確保が困難なら速やかに次の手段へ移行することです。中心静脈路は手技の習熟と時間を要するため、緊急時の優先度は意外と低いんですね。一箇所にこだわって時間を溶かさない。これが大原則です。
2:25末梢静脈路:18G以上を上肢に2本以上
まずは第一選択の末梢静脈路から深掘りしていきます。留置針はゲージ数ごとに色分けされていて、色を見ればだいたいの太さがわかるようになっています。ショックの場合のお作法は、18G以上の太いルートを2本以上確保すること。太い針にこだわる理由は、流量をしっかり確保するためです。急速投与しようと思うと、針の太さがものを言います。
📊 初期輸液量の目安
| 状況 | 輸液量の目安 |
|---|---|
| 外傷(成人) | 約1L |
| 敗血症(成人) | 30mL/kgを3時間以内(50kgなら約1.5L) |
| 小児 | 20mL/kg |
3:45適応・禁忌・合併症、そして24時間以内に抜去
ここからが本日の本題、骨髄路です。適応は教科書的には「緊急時に末梢静脈路の確保が困難な場合」。シンプルですね。一方で、禁忌と合併症はしっかり押さえておきましょう。
⚠️ 骨髄路の禁忌と合併症
- 禁忌:骨折している部位/感染徴候のある部位/整形外科手術をしている部位/同部位への穿刺後48時間以内
- 合併症:骨髄炎、皮下漏出、コンパートメント症候群 など
穿刺のデバイスには、錐のように用手的にグリグリと刺すイリノイ骨髄穿刺針と、電動のArrow EZ-IO骨髄穿刺システムがあります。電動タイプが導入されている施設の方は、見たことがあるかもしれませんね。
そしてもう一つ大事なのが、骨髄路はあくまで「つなぎ」のルートだということ。留置後、状態が安定したら原則24時間以内に抜去する。ここを忘れないでください。
4:45穿刺部位:上腕骨近位は約3秒で心臓に届く
穿刺部位は、成人・小児ともに上腕骨近位と脛骨近位が代表的です。小児では脛骨遠位や大腿骨遠位も選択肢になり、左右どちらの側でも選択できます。
その中でも注目してほしいのが、上腕骨近位の利点です。
✅ 上腕骨近位が「使える」理由
- 薬剤投与から約3秒で心臓に到達する。とにかく速い
- 妊産婦や腹部より下の外傷では、下肢からの輸液が病変部より末梢になってしまう可能性がある。腹腔内出血のある患者さんに下腿からどれだけ輸液しても、心臓に届く前に出血部位から失われてしまえば効果がない
シミュレーションではどうしても脛骨近位を使うことが多いと思いますが、「上腕骨近位もいいんだよ」というのは、ぜひ覚えておいてください。
5:52ランドマークを触れて、骨面に90度
穿刺するときのポイントです。まずはランドマークをしっかり触知して確認すること。なんとなくの場所で刺してしまうと、合併症を引き起こすリスクがあります。次に、骨面に対して90度で穿刺すること。そして、血管・神経・関節を避けること。ランドマークを意識すれば、自然と安全な位置に刺せるはずです。
穿刺部位を決めたら、ためらわずにスッと刺すのもコツです。ためらっているとなかなか入らないことがあるので、「垂直に、さっと」を意識してみてください。
6:47針の長さは体重で選ぶ
EZ-IOの針は黄色・青・赤(ピンク)と色分けされていて、針の長さは体重を目安に選びます。
📊 針長の選択(体重の目安)
- 15mm:3〜39kg
- 25mm:3kg以上
- 45mm:40kg以上(成人は基本この黄色!)
そして実践的なポイントがこちら。骨表面に針先が接した時点で、針の黒ラインが皮膚の外に視認できない場合は、その針は長さ不足です。より長い針に変更してください。皮膚から骨まで5mmの余裕があるかどうかが目安になります。
7:34手順:逆血が出なくても慌てない
実際の手順を順番に見ていきましょう。
📋 骨髄路穿刺の手順
- 消毒する
- パワードライバー、または用手的に穿刺する
- 内筒を抜去し、シリンジで吸引して逆血を確認する(出ないこともある)
- 細胞外液10mLでフラッシュし、抵抗や漏れがないか確認する
- ルートをつなぐ
- 固定性・輸液の滴下・穿刺部周囲から裏側の腫脹の有無を確認する
ここで大事なのは、逆血が確認できなくても失敗と決めつけないことです。針が長すぎて骨を貫通してしまい、裏側が腫れてくるというトラブルもあるので、穿刺部の裏側までしっかり見てあげてください。
✅ 留置成功の判断は3点セット
- 固定性が良好である
- 輸液がしっかり滴下する
- 穿刺部周囲〜裏側に腫脹がない
8:30穿刺のコツと安全確認
穿刺のコツも少しだけお話しします。イメージは「錐で穴を開ける」要領。ブスッと掘り進めるのではなく、回転させながらスッと骨皮質を貫く感覚です。
脛骨で刺す場合は、脛骨結節のやや下・内側の平坦部を狙って、針先はわずかに足側(約10度)へ傾けると刺しやすくなります。脛骨粗面に少し角度がついていることを意識するといいですね。
⚠️ 穿刺部の対側に、術者の指を置かない
支えようとして反対側に指を添えてしまうと、針が貫通したときや手元がずれたときに、自分の指を刺してしまうことがあります。手技は安全に。対側に指がないことを必ず確認してから穿刺しましょう。
9:33CT像で見る「機能する」先端位置
セミナー内では、実際に骨髄針を留置した後の右上腕骨CT画像もお見せしています。上腕骨近位に入った骨髄針が骨皮質をしっかり貫通し、先端が髄腔内に達しているのがわかります。
骨髄路は、先端が骨皮質を越えて髄腔内に達して初めて機能します。逆に言えば、骨皮質の途中で止まっていたら輸液は入りません。「骨皮質を貫くイメージ」を、このCT像とセットで頭に焼き付けておいてください。
10:01まとめ:迷わず次の一手を出す
✨ 今日のポイント
- 輸液路は末梢静脈路 → 骨髄路 → 中心静脈路の順に選択する
- 確保が困難なら速やかに次の手段へ。一箇所にこだわって時間を溶かさない
- 末梢静脈路は18G以上を上肢に2本以上
- 太い針にこだわる理由は流量。外傷成人は約1L、小児は20mL/kgが初期輸液の目安
- 末梢静脈路が困難なら、迷わず骨髄路
- 禁忌(骨折・感染・整形手術部位・同部位48時間以内)を確認し、原則24時間以内に抜去する
- 上腕骨近位は薬剤到達が速い(約3秒)
- 妊産婦や腹部以下の外傷にも適している
- 穿刺は錐で穴を開ける要領で、掘り進めない
- 骨面に90度、針先は足側10度、対側に指を置かない
- 成否は固定性・滴下・腫脹なしの3点で判断する
- 逆血が出なくても失敗と決めつけない。裏側の腫脹まで確認する
🎯 今回のゴール(再掲)
「末梢が取れません」と言われたら、迷わず「骨髄路でいこう」と言えるようになる
💡 吹き出し|あつし
骨髄路って「いつかやるかもしれない手技」の代表格で、いざその場面が来ると手が止まりがちなんだよね。でも今日の内容を見れば、針の選び方から成否の判断まで一本の流れになってるのがわかると思う。次のシミュレーションでは、いつもの脛骨だけじゃなくて上腕骨近位のランドマークも触って確認してみてほしいな。
どうですか?あなたの感想を聞かせてください。
緊急時のルート確保は、優先順位を知っているかどうかで初動がまったく変わります。「末梢が取れない」と言われた瞬間に頭が真っ白になるのではなく、「じゃあ骨髄路で」と次の一歩を踏み出せるかが大切だと思います。ここが今回いちばん持ち帰ってほしいところです。
うちの施設では電動のEZ-IOが入っている、実際に上腕骨近位で刺したことがある、といった経験談があれば、ぜひQラボのチャットやマシュマロで聞かせてくださいね。





