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アナフィラキシーショックについて学ぼう【Qラボ2026年6月アーカイブセミナーその2】

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📚 目次(クリックで該当箇所へジャンプ)

【導入】

【アナフィラキシーをどう捉えるか】

【重症度を評価する】

【初期対応の実際】

【その後の管理】


0:00第2回テーマ:アナフィラキシーショックを各論で学ぶ

2026年6月のQラボは、ショックをテーマに各論で掘り下げています。第2回となる今回は、アナフィラキシーショックを取り上げます。前回の外傷のショックと同じく、まずは病態を確認し、重症度を評価したうえで、第一選択であるアドレナリンの筋注をどう実施するか、そしてその後のディスポジションをどう考えるか、という流れで学んでいきましょう。

💡 今回の到達目標

  • アナフィラキシーの定義と診断基準をしっかり理解できるようになる
  • 重症度を評価して、適切な初期対応につなげられるようになる
  • 治療の第一選択であるアドレナリン筋注を実施でき、プラスアルファの治療も押さえる
  • 治療後のディスポジションを検討するのに必要な知識を身につける

0:20定義:アレルゲン曝露で起こる全身性の反応

そもそもアナフィラキシーとは、アレルゲンが侵入することによって、複数の臓器に全身性のアレルギー症状が起こり、時に生命を脅かしうる過敏な反応のことです。まず「アレルゲンがある」という前提と、「アレルギー反応である」という点を押さえておきましょう。

📋 アナフィラキシーとアナフィラキシーショック

  • アナフィラキシー:アレルゲン曝露によって、複数臓器に全身性のアレルギー症状が急性に起こる反応
  • アナフィラキシーショック:アナフィラキシーに血圧低下・意識障害を伴う場合

大事なのは、ショックであってもなくても、やらなければいけない治療は病態として同じだという点です。まず介入すべきところは一緒なので、ショックかどうかで身構えすぎる必要はありません。


1:28診断基準は3パターン、とにかく広く疑う

どのような症状があればアナフィラキシーと診断できるのか。ガイドラインでは大きく3つのパターンが示されています。一つひとつを丸暗記するのは大変なので、「アレルゲン曝露のあとに全身性の症状が出たら、アナフィラキシーかもしれない」と広く疑う姿勢を持つことがいちばんのポイントです。

📊 アナフィラキシーの診断基準(3パターン)

パターン 内容
皮膚・粘膜症状に加え、呼吸器症状 または 循環器症状(血圧低下)があるとき
アレルゲン曝露後に急激に発症し、
皮膚・粘膜/呼吸器/循環器/消化器のうち 2つ以上を伴うとき
既知のアレルゲン曝露後の 血圧低下

2:26皮膚症状がなくてもアナフィラキシー

アナフィラキシーというと、どうしても皮膚症状にフォーカスが当たりがちです。ですが、ここに大きな落とし穴があります。

⚠️ 皮膚症状がない症例が1〜2割ある

皮膚症状を伴わないアナフィラキシー・アナフィラキシーショックも 1〜2割 存在します。「皮膚症状が出ていないからアナフィラキシーではないだろう」と考えてしまうのは、過小評価につながり得るので注意が必要です。


3:51鑑別疾患と、迷ったときの考え方

アナフィラキシーの全身症状と共通する症状を持つ疾患があるため、しばしば鑑別に挙がってきます。「気管支喘息だと思っていたら実はアナフィラキシーだった」ということも、その逆もあり得ます。

📋 鑑別に挙がりやすい疾患

  • 気管支喘息:呼吸器症状が共通する
  • パニック発作:呼吸困難感や動悸が共通する
  • 神経調節性失神:意識消失が共通する(朝礼で倒れる中学生、などが典型例)

年齢・性別・病歴といった背景も鑑別の助けになります。ただし最も大切なのは、迷った場合はアナフィラキシーとして動くこと。鑑別に悩んでアドレナリン投与を遅らせないことが、何よりのポイントです。


4:49重症度はABCDEで評価する

アナフィラキシーかもしれないと思ったら、重症度を評価します。これは結局、全身性の症状がどれくらい強く出ているか、とくに ABCD に関わる部分が中心になります。「ショック」というと C の異常をイメージしやすいですが、アナフィラキシーは ABCD すべてに障害をきたしうるのがポイントです。

📋 ABCDE で症状を網羅的に評価する

  • A(気道):気道狭窄、ストライダーなど
  • B(呼吸):呼吸困難、喘鳴など
  • C(循環):循環不全を示唆する所見、血圧低下
  • D(意識):意識障害、意識消失
  • E(皮膚など):蕁麻疹・紅斑などの皮膚症状

重症に該当する項目があるときは、すぐに救急要請(あるいは院内応援要請)を行ったうえで、アドレナリン筋注をただちに準備して投与を始めます。


5:48忘れられがちな消化器症状

ABCDE を評価したあと、もう一歩進めて確認したいのが消化器症状です。ここがいちばん忘れやすいところです。

⚠️ 「お腹は痛くないですか?」を忘れない

腹痛・嘔吐・気持ち悪さといった消化器症状も、実はアナフィラキシーの症状であることがよくあります。ABCDE を確認したあとに「お腹が痛くないですか」「気持ち悪くないですか」とひと言尋ねることで、症状を網羅的に評価できます。


6:45初期対応の流れ:除去・体位・アドレナリン

初期対応の流れを整理しておきましょう。何より大事なのが アレルゲンの除去 です。たとえば造影剤によるアレルギーなら、すぐに点滴を止め、原因薬剤がそれ以上入らないようにします。

✅ 初期対応のステップ

  • アレルゲンの除去:原因薬剤の投与を止める
  • 体位:臥位にして下肢を挙上する(急に体位を変えると血圧が下がることがあるので注意)
  • アドレナリン:大腿外側にしっかり筋注する
  • 酸素投与十分な輸液:アドレナリンだけでは離脱できず、輸液が必要なことも多い
  • 気道確保の準備を必ず行う
  • 筋注後 5〜10分 経っても改善がなければ、追加投与を考える

アドレナリンを打てばショックから離脱できると思われがちですが、しっかり輸液をしないと離脱できないこともあります。「ABC すべてを安定させる」というマインドで介入することが大切です。院内急変では、ABC を安定させるための資機材を持参することも意識しておきましょう。


8:39アドレナリン筋注の投与量

多くの施設では救急カートに 0.3mg で準備されていることが多いですが、最近のガイドラインでは「0.3mg だけでは不十分なこともある」とされています。

📊 アドレナリン筋注の投与量

  • 投与経路は 大腿外側への筋注
  • 体格の大きな方(例:体重 50kg 以上)は 0.5mg まで しっかり投与する
  • 頻回の再投与が必要になることが多いため、投与量を確保するという考え方が背景にある
  • 小児では体重あたりで計算し、反復投与を意識する

くり返しになりますが、臥位+下肢挙上、十分な輸液とあわせて、ABC すべてを安定させる意識で介入していきます。


9:33プラスアルファの治療と難治例への対応

アドレナリンの筋注をしながら、ほかにできることも整理しておきましょう。

📋 プラスアルファの治療の位置づけ

  • 抗ヒスタミン薬(ファモチジン・ポララミンなど):アレルギー症状の緩和には期待できるが、ショックの離脱には直接寄与しない
  • ステロイド:喘息などの合併があれば考慮。二相性反応の予防効果は、現状では乏しいというのが通説になりつつある
  • β刺激薬の吸入:気管支痙攣など気道の問題があるときに用いる

いずれにしても主役はアドレナリンの筋注です。プラスアルファの治療に気を取られて、筋注が遅れないようにしましょう。

⚠️ 難治性アナフィラキシーへの対応

アドレナリンを筋注しても症状・ショックが持続する場合は 難治性 と判断します。全例 ICU で管理すべき病態と認識し、チームで対応します。

  • アドレナリンの持続点滴を段階的に開始する
  • ノルアドレナリンや、時にバソプレシン(ピトレシン)を併用する
  • あわせて気道確保・気管挿管も検討する

βブロッカー内服・貼付中の方では、アドレナリンのβ効果が減弱して効きにくくなります。この場合は グルカゴン を使用します(まず単回投与し、効果がありそうなら持続投与も検討)。ただしグルカゴンは 嘔吐 の副作用が多く、誤嚥・窒息に注意が必要です。お薬手帳でβブロッカーの内服・貼付がないか確認しましょう。


13:12二相性反応とディスポジション

最後に、二相性反応のリスクを押さえておきましょう。二相性反応とは、いったん良くなったあとに、再びショックや症状をきたすパターンのことです。発生頻度は決して低くありません。

💡 二相性反応のポイント

  • 典型的には 4〜12時間後 に起こると言われている
  • 明確な線引きは難しく、さまざまなスコアリングはあるものの決定的なものはない
  • リスクのある患者さんは、半日〜1日程度の入院・経過観察を前提に管理するのが無難
  • 施設によっては救急外来の経過観察ベッドでフォローすることもある

どれくらい経過を見るか、どこでフォローするかは施設によって対応が異なります。ご自身の施設で院内がどう動いているかを、ぜひ一度確認してみてください。


まとめ:迷ったらアドレナリン、遅らせない

✨ 今日のポイント

  1. ショックでもショックでなくても、初期介入は同じ
    • アナフィラキシーに血圧低下・意識障害を伴うとショック。やるべき治療の入口は変わらない
  2. 診断基準は3パターン、とにかく広く疑う
    • 皮膚症状がない症例も1〜2割ある。「皮疹がないから違う」は過小評価
  3. 迷ったらアナフィラキシーとして動く
    • 喘息・パニック発作・神経調節性失神などと鑑別。迷ってもアドレナリンを遅らせない
  4. 重症度は ABCDE +消化器症状で評価
    • 腹痛・嘔吐も症状。「お腹は痛くないですか」を忘れない
  5. 第一選択はアドレナリン筋注
    • 大腿外側へ。体格の大きな方は0.5mgまで。除去・下肢挙上・十分な輸液・気道確保もセットで
  6. プラスアルファは脇役、難治例は ICU へ
    • 抗ヒスタミン薬・ステロイドはショック離脱に直接効かない。βブロッカー内服例はグルカゴン(嘔吐に注意)
  7. 二相性反応を見越したディスポジション
    • 4〜12時間後に再燃しうる。リスク例は半日〜1日の経過観察を前提に

🎯 第2回のゴール(再掲)

迷ったらアナフィラキシーとして動き、アドレナリン筋注を遅らせない


どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

アナフィラキシーは、結局のところ「広く疑って、迷ったらアドレナリンを遅らせない」というところに尽きるのだと思います。皮膚症状にとらわれず、ABCDE と消化器症状まで見て、除去・下肢挙上・輸液・気道確保をセットで動く。そして二相性反応を見越して、どこまで経過を見るかを最初から考えておく。この一連の流れを、ぜひ自分の施設の動き方とすり合わせてみてください。
6月はこのあとも、ショックを一つずつ各論で掘り下げていきます。一緒にステップアップしていきましょう。
うちの施設ではこう動いている、ここはちょっと違うんですよね、といった声があれば、ぜひQラボのチャットやマシュマロで聞かせてくださいね。