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出血性ショックについて学ぼう【Qラボ2026年6月アーカイブセミナーその1】

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📚 目次(クリックで該当箇所へジャンプ)

【導入】

【外傷のショックをどう捉えるか】

【出血源を見つける】

【致死的三徴を回避する】

【外傷蘇生の実際】

【まとめ】


0:00第1回テーマ:外傷のショックを各論で学ぶ

2026年6月のQラボは、ショックをテーマに勉強していきます。循環の評価や介入については、これまでのセミナーでも繰り返し扱ってきましたよね。そこで今月は、その総論を一歩進めて、それぞれのショックに実際どう対応していくのかという各論にフォーカスしていきたいと思います。その第1回として取り上げるのが、外傷のショックです。

💡 今回の到達目標

  • 外傷患者さんのショックの病態を、あらためて確認できるようになる
  • 外傷外科的に介入しうるショックについて、治療の特殊なポイントを押さえる
  • 出血性ショックの管理で鍵になる、外傷死の三徴の回避を理解する

0:59外傷ショックの原因は9割が出血性

外傷でショックになる患者さんは、その9割方が出血性ショックだと言われています。具体的な出血の場所としては、胸腔内にたまる血胸、腹腔内出血、そして骨盤骨折などに伴う後腹膜血腫が代表的です。これらをレントゲンやCTでいかに早く見つけられるかが、外傷蘇生のとても大事なポイントになってきます。

📋 外傷ショックの原因

  • 出血性ショック(約9割):血胸/腹腔内出血/後腹膜血腫(骨盤骨折)
  • 閉塞性ショック:心タンポナーデ、緊張性気胸
  • 神経原性ショック:脊髄損傷

出血が圧倒的に多いとはいえ、心タンポナーデや緊張性気胸による閉塞性ショック、脊髄損傷による神経原性ショックなど、出血以外でもショックになりうるという点は、頭の片隅に置いておくとよいかなと思います。


1:54ショックは低血圧ではない

これはQラボのいろいろなセミナーで口酸っぱくお伝えしてきたところですが、ショックは低血圧のことではありません。バイタルサインだけを見て、ショックかどうかを判断することはできないのです。

⚠️ バイタルサインは修飾される

とくに出血性ショックでは、患者さんの背景によって見かけの数字が変わってしまいます。

  • 高齢者やβブロッカー内服中の方は、本来上がるはずの心拍数が低めに見えてしまう
  • 低体温・妊婦など、バイタルサインを変動させうる要素はほかにも多くある

バイタルサインが保たれているからこの患者さんは安心だ、と考えてしまうのは危険です。必ず背景を確認したうえで、数字を鵜呑みにしすぎないという姿勢が大切になりますね。

血圧だけで評価しないという話とつながりますが、出血量は重症度分類からある程度推定することができます。

📊 出血の重症度分類(推定出血量の目安)

クラス 推定出血量 イメージ
〜15%(〜750mL) バイタルはほぼ正常
15〜30%(750〜1500mL) 頻脈・脈圧低下が出てくる
30〜40%(1500〜2000mL) 明らかな頻脈・血圧低下
40%超(2000mL超) 生命を脅かす出血

総論的には、このクラスⅢになる手前で、大量輸血プロトコル(MTP)を発動できるように動きましょう、というのが一つの目安になります。もちろんバイタルサインも参考になりますが、先ほどお伝えしたように修飾されることがありますので、ベースエクセスや乳酸値もあわせて評価していきます。これらは組織への灌流、つまり血液がきちんと行き渡っているかどうかを反映してくれますので、合わせ技で見ていくのがポイントですね。


2:48出血源は3か所、エコーとレントゲンで評価する

繰り返しになりますが、外傷ショックで押さえるべき出血源は、血胸・腹腔内出血・骨盤骨折による後腹膜出血の3か所です。これらは、エコー(FAST)やレントゲンで評価をして、介入につなげていくことになります。

📋 押さえるべき3つの出血源と評価

  • 血胸:胸部レントゲン、胸部エコー、胸腔ドレナージ
  • 腹腔内出血:FAST、造影CT
  • 後腹膜出血(骨盤骨折):骨盤レントゲン、造影CT

3:43出血源のピットフォール

エコーやレントゲンを撮ったとしても、それでも見落としが起こりうるところに、外傷の難しさがあります。代表的なピットフォールを挙げておきます。

⚠️ 見落としが起きやすい場面

  • FASTが陰性、あるいは微妙なとき:とにかく繰り返し評価することが大事です。最初は出ていなくても、肝周囲に腹水がたまってくれば腹腔内出血を疑える、というように、何度も見ることで分かることがあります
  • ドレーンの排液が少ないとき:排液量が減れば安心とは限りません。逆に血液が固まって流れず、胸腔内にどんどんたまっていき、最終的に心臓を圧迫する閉塞性ショックや、出血性ショックに陥ることがあります
  • 意識が改善しない/輸血しても安定しないとき:別の出血源が隠れていないか、何度でも立ち戻って探す必要があります

介入したのに血圧が上がらない、どうしてだろう、と感じたときこそ、本当にマッシブに出血しているのはどこなのかを確認しにいく。これがいちばんのポイントになるかなと思います。


5:38外傷死の三徴が揃う前に動く

外傷でとても大事な考え方の一つが、外傷死の三徴(致死的三徴)です。低体温・凝固異常・代謝性アシドーシス、この3つを軸として考えていきます。

💡 外傷死の三徴(致死的三徴)

  • 低体温
  • 凝固異常
  • 代謝性アシドーシス

この三徴は、揃えば揃うほど死亡率が高くなります。3つが出そろってから命を救うのは、本当に大変だというデータが示されています。

だからこそ、三徴が揃う前に動くことが、外傷蘇生の基本になります。手術についても、いきなり大きな侵襲を加えるのではなく、まずは止血を優先したとりあえずの手術にとどめておく。こうしたダメージコントロールの考え方を、ぜひ理解しておいてもらえると嬉しいです。


7:27permissive hypotension:血圧は上げすぎない

ここからは少し外科医的なマインドのお話です。非専門の先生や内科系のスタッフの方が気になりやすいのが、permissive hypotension(許容的低血圧)と、輸血の投与比率のあたりかなと思いますので、順番に触れていきます。

まず permissive hypotension です。出血がドバドバ出ているときに血圧を上げると、その分よけいに血が出てしまいますよね。さらに、昇圧を目指して輸液をたくさん入れることで、血液が薄まって凝固障害が起きてしまうこともあります。ですので、目標とする血圧はあくまで目安として、少し低めで許容するという考え方をベースにしてみてください。

⚠️ ここだけは覚えておきたい例外

頭部外傷を伴う場合は、低血圧をある程度許容しましょう、とはなりません。低血圧が脳の二次的な障害につながるためで、permissive hypotension の対象外になります。ここだけはしっかり区別して覚えておいてもらえるとよいかなと思います。


8:24大量輸血プロトコルとトラネキサム酸

次は輸血です。赤血球(PRBC)・新鮮凍結血漿(FFP)・血小板(PLT)の3つを、おおむね1対1対1の比率で投与するのがよいだろう、というのが通説になっています。

✅ 大量輸血プロトコル(MTP)発動の目安

  • 輸血比率は PRBC:FFP:PLT = 1:1:1 を目標にする
  • 発動の判断材料:ショックインデックス乳酸値ベースエクセス
  • 重症度の高いクラスⅢの出血や、持続する出血があるときは、発動を積極的に考える

ショックインデックスや乳酸値、ベースエクセスは、パッとモニタリングしやすい数字です。ICU管理にまだ慣れていない先生方にとっても、これらがクリアカットな基準になっていると相談しやすくなるのではないかなと思います。

外傷で押さえておきたい薬剤として、トラネキサム酸も挙げておきます。

📊 トラネキサム酸の投与方法

  • まず 1gを10分かけて投与する
  • 続けて 1gを8時間かけて投与する(シリンジポンプで持続投与する施設もあります)
  • 受傷から3時間以内に開始するのが原則。可能なかぎり早く投与したいので、受傷のタイミングをしっかり確認しておく

9:22低カルシウム血症と体温管理

細々とした話が続きますが、ここも外傷蘇生では見落としたくないところです。

✅ 忘れられがちな2つのケア

  • 低カルシウム血症への対応:グルコン酸カルシウムなどで、しれっと、でも確実に補ってあげることが大切です。カルシウムは凝固にも関わるため、輸血と並行して投与を確認できるとよいですね
  • 体温管理:とにかく低体温は避けたいので、加温式のブランケットを必ずかけて移動する、室温も早めに上げておく、といった対応を徹底していきます

外傷の蘇生では、手術をどうするか、昇圧薬を入れるか、開胸するか、といった大きな判断にどうしても注目が集まりがちです。だからこそ、誰かが輸血のオーダーに専念しているあいだに、別の誰かがカルシウムの投与や体温の管理を確認する。こうしてチームで役割を分担できると、みんなで連携しながら患者さんをよくしていけるのではないかなと思います。


10:01まとめ:原因に立ち戻り、三徴が揃う前に動く

✨ 今日のポイント

  1. 外傷ショックの9割は出血性
    • 血胸・腹腔内出血・後腹膜血腫の3か所を、エコーとレントゲンで早く見つける
  2. ショックは低血圧ではない
    • バイタルは高齢・βブロッカー・低体温などで修飾される。ベースエクセスや乳酸値も合わせて見る
  3. 出血源にはピットフォールがある
    • FAST陰性や微妙なときは繰り返し評価。ドレーン排液が少ないときも油断しない
  4. 外傷死の三徴が揃う前に動く
    • 低体温・凝固異常・代謝性アシドーシス。ダメージコントロールで先手を打つ
  5. permissive hypotension は頭部外傷では使わない
    • 出血時は血圧を上げすぎない。ただし頭部外傷を伴うときは例外
  6. 輸血は1:1:1、発動はショックインデックス・乳酸・BE で
    • トラネキサム酸は受傷3時間以内に開始する
  7. カルシウムと体温も忘れない
    • グルコン酸カルシウムの補正と、加温ブランケットでの保温を徹底する

🎯 第1回のゴール(再掲)

三徴が揃う前に、原因に立ち戻って先手を打てるようになる

💡 吹き出し|あつし

外傷蘇生って、つい手術や開胸みたいな大きな判断に気を取られちゃうんだよね。でも、実際に死亡率を左右するのは、低体温・凝固異常・アシドーシスをいかに揃えないか、という地味な積み重ねだったりする。次に外傷の蘇生に入るときは、保温とカルシウムを声に出して確認する役を、ぜひ自分から買って出てみてほしいな。


どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

外傷のショックは、結局のところ、どこからマッシブに出血しているのかを突き止めて、三徴が揃う前に止血と補正を間に合わせられるか、というところに尽きるのだと思います。介入したのに血圧が上がらないと感じたら、いつでも原因に立ち戻る。この姿勢が、いちばんの武器になりますね。

6月はこのあとも、ショックを一つずつ各論で掘り下げていきます。一緒にステップアップしていきましょう。

うちの施設ではこう動いている、ここはちょっと違うんですよね、といった声があれば、ぜひQラボのチャットやマシュマロで聞かせてくださいね。