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人工呼吸器の波形を学ぼう【2026年5月Qラボアーカイブセミナーその2】

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📚 目次(クリックで該当箇所へジャンプ)

【導入】

【グラフィック波形の基本】

【3つの波形を読み解く】

【VCとPCの見分け方】

【吸気の終了タイミング】

【まとめ】


0:005月の第2回:人工呼吸の波形を学ぼう

2026年5月のQラボ第2回アーカイブセミナーは、「人工呼吸の波形を学ぼう」というテーマでお話ししました。
人工呼吸器は、本当に理解するのが難しい分野です。

「何からどうやって手をつけたらいいのか分からない」

「グラフィックを見ても何を見ればいいか分からない」

そんな悩みをよく耳にします。

そこで第2回は、その出発点として「グラフィック波形が何を表しているか」を整理し、まずは“VCかPCか”を波形で見抜けるようになるところまでを一緒に進めていきます。

💡 第2回のゴール

グラフィック波形が”何を測って、何を表しているか”を整理することで、見るべきポイントが浮かび上がってきます。この回が終わる頃には、波形を見て「これはVCだな」「これはPCだな」が判断できるように──。そこを目標に進めていきましょう。


0:54グラフィック波形の役割:何を測って表示しているのか

人工呼吸器の設定を勉強するうえで、グラフィック波形はとても大事な情報源です。なぜなら、モニターに出ている波形は、すべて圧力計と流量計で測定したデータを、時間軸に沿って視覚化したものだから。

📋 グラフィック波形を見ると分かること

  • 患者さんの呼吸状態を視覚的・多角的に評価できる
  • 人工呼吸が意図したとおりに行われているかを確認できる
  • 患者さんと呼吸器の同調性(ファイティング・非同調)まで評価できる

つまりグラフィック波形は、聴診器を当てるのと同じ感覚で「設定どおりに換気できているか」を確認する診察ツールなんです。設定値だけでなく、まずモニターに目を向ける──これが第一歩になります。


1:43グラフィック波形は2つのカテゴリに大別される

グラフィックモニターに表示される波形は、ざっくり2つに分けられます。

📊 グラフィック波形の2大カテゴリ

カテゴリ 特徴
トレンド波形 圧・フロー・換気量を時間軸に沿って表示する波形。普段一番よく目にする
ループ波形(圧量曲線・フローボリュームカーブ) 2つのパラメータの関係をループで描く波形。コンプライアンスや気道抵抗の評価に使うが、初学者にはハードルが高い

💡 今回はトレンド波形に絞る

ループ波形(PVカーブ・FVカーブ)は奥が深く、最初に勉強するには少し難しいです。なので今回は、呼吸回数・分時換気量・1回換気量など普段モニターで見ている数値の元になっているトレンド波形に絞って、しっかり整理していきます。ループ波形は、また別の回でじっくり扱う予定です。


2:42トレンド波形は3つ(圧・フロー・換気量)

トレンド波形は、上から順に3つ並んで表示されることが多いです。

📋 まずはこの3つを覚える

波形 表しているもの
① 圧時間曲線(圧波形) 気道内圧の経時的な変化
② フロー時間曲線(フロー波形) 肺に流れ込む/出ていくガスの方向速さ
③ 換気量時間曲線(換気量波形) 肺に出入りするガスのの変化

名前のとおり、圧波形は”圧”、換気量波形は”量”を見ているもの。少しややこしいのがフロー波形で、これは“流れの速さ”を表したものです。「フロー=流れの速さ」と覚えてしまうのが、いちばん近道だと思います。

🔑 まずやることは「3つの波形が何を表しているか」を腹落ちさせること

この3つを区別できるようになるだけで、モニターを見たときの情報量が一気に増えます。設定値の議論をする前に、ここをしっかり押さえておきましょう。


3:38換気量波形は”流量×時間”の積分

換気量波形は、肺に入る/出るガスの量を経時的に表した波形です。実は、これは流速計で測ったフロー(流量)を時間で積分したもの
「積分」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、考え方は“速さ × 時間 = 距離”と同じです。

✅ 換気量波形のイメージ

  • フロー(流量=速さ)に時間を掛け合わせていく
  • その積み重ねが、最終的に肺に入った”量”になる
  • つまり、フロー波形を時間方向に積み上げたものが換気量波形

ここを押さえておくと、後で出てくる「VCとPCで換気量波形の登り方が違う理由」がスッと理解できます。


4:34フロー波形のプラスとマイナス、そして”ゼロ”の意味

フロー波形には、プラス軸(上向き)マイナス軸(下向き)があります。ここを理解できると、フロー波形が一気に読みやすくなります。

📊 フロー波形のプラスとマイナス

意味
プラス軸(上向き) 吸気。肺に流れ込む方向
マイナス軸(下向き) 呼気。肺から流れ出る方向
プラスとマイナスの切り替わり 流量が必ず一度ゼロになる

💡 “ゼロ”のときに何が起きているのか

吸気から呼気に切り替わる瞬間、フロー波形は必ずゼロ点を通過します。これは単なる折り返し地点ではなく、気道内圧と肺胞内圧の差がなくなった瞬間を表しています。

圧の差がゼロになるからこそ、ガスは「もうこれ以上動かない」状態になり、流量がゼロになる。──このイメージを持てるようになると、後でループ波形を学ぶときにも理解が早くなります。


5:27VCVとPCV:何を固定するモードなのか

人工呼吸器の換気モードは、設定の方法によって大きく2つに分かれます。

📊 VCVとPCV:どちらの値を固定するか

モード 固定するもの 別名
VCV(ボリュームコントロール) 1回換気量(流量) 定量式換気
PCV(プレッシャーコントロール) 吸気圧 重圧式換気

何を固定しているかで名前が変わる──と覚えると、設定モードの命名がすっと入ってきます。そして波形を見ると、“フラットになっているところ”が、そのモードで固定している値を表しているんです。

📋 波形でVC/PCを見分けるポイント

  • VCV:フロー波形が“四角くフラット”になる(定量で送気→達したらバコッと打ち止め)
  • VCV:圧波形は患者さんの肺の状態に応じてなだらかな山のように上昇
  • PCV:フロー波形は立ち上がってから減衰する形(減速波)
  • PCV:圧波形は“角ばった台形”で、設定圧で頭打ちになる

この見分けができるようになると、モニター越しに「いま、何の設定で換気しているのか」が一瞬で分かるようになります。今日のいちばんの肝はここです。


6:25圧波形でPEEPと吸気圧(above PEEP)を読む

圧波形を見るうえで、必ず押さえておきたい数値が2つあります。

📊 圧波形で読むべき2つの値

用語 意味
PEEP 呼気の終末でも持続的にかかっている陽圧。波形の”底”の高さで決まる
above PEEP(吸気圧) PEEPから最高気道内圧までの差分。実際に「肺をどれだけ膨らませる圧か」を表す

人工呼吸器の設定で「PEEPはいくつ?」「吸気圧はいくつ?」と必ず聞かれるのは、この2つが酸素化と換気の両方を大きく左右するからです。

✅ 圧波形を見るときの順番

  1. 波形の底の高さを見る → これがPEEP
  2. 波形のてっぺんの高さを見る → これが最高気道内圧
  3. その差分を見る → これが吸気圧(above PEEP)

この3ステップでパッと拾えるようになると、上級医や臨床工学技士さんとの議論が一気にスムーズになります。


8:17換気量波形:VCとPCで登り方が違う

VCVとPCVでは、換気量波形の”登り方”もはっきり違います。

📊 換気量波形の違い

モード 換気量波形の特徴 理由
VCV 直線的に上昇して、目標換気量で打ち止め 流量が固定されているので、時間に対して一定のスピードで増えていく
PCV はじめは急に上がり、徐々に緩やかになる 圧で規定するため、入る量は肺の状態に依存し、フローも減速波になる

ここで、先ほどの“換気量波形=フロー波形の積分”という考え方が効いてきます。VCVはフローが一定の四角形なので、積み上げると直線。PCVは減速していくフローを積み上げるので、最初に大きく登って、後半でゆるやかになる──そういうイメージです。

🔑 3つの波形は連動している

圧波形・フロー波形・換気量波形は、別々に存在しているのではなく、1つの呼吸を3つの角度から見ているもの。3つを並べて読めるようになると、人工呼吸器が”今やっていること”が立体的に見えてきます。


9:12VC・PC・PSV、それぞれ”いつ”吸気が終わるのか

もう一つ、面白い視点があります。それが「吸気がどのタイミングで終わるか」。実はこれもモードによって違います。

📋 吸気終了の引き金はモードごとに異なる

モード 吸気が終わるタイミング
VCV 設定した1回換気量に達した瞬間(”量”で終わる)
PCV 設定した吸気時間が経過した瞬間(”時間”で終わる)
PSV(プレッシャーサポート) 吸気フローがピークから一定の割合まで下がった瞬間(”流量の減衰率”で終わる)

⚠️ PSVの吸気終了は”流量”で決まる

PSVは、自発呼吸がある患者さんの吸気を圧でサポートするモード。「吸い始めたタイミングで圧をかけ、フローがピークの〇%まで下がったら吸気終了」という仕組みで動いています。

この“〇%”の部分(吸気終了感度)が合っていないと、患者さんが吸い終わっているのに呼吸器がまだ送気を続けたり、逆に早く切り上げすぎたり──といった非同調が起きやすくなります。

ここまで来ると、ただ波形を見て「VCかPCか」を判断するだけでなく、患者さんと呼吸器の同調性まで波形から評価できるようになっていきます。今月は人工呼吸の話を繰り返し聞いていただく予定なので、徐々に深めていきましょう。


10:00まずは”VCかPCか”を見抜けるところから

✨ 今日のポイント

  1. グラフィック波形は”設定どおりに換気できているか”を確認する診察ツール
    • 圧力計と流量計のデータを、時間軸で視覚化したもの
  2. 大きく分けて2カテゴリ:トレンド波形とループ波形
    • 普段見ているのはトレンド波形。ループ波形はもう少し先で扱う
  3. 覚えるトレンド波形は3つ:圧・フロー・換気量
    • フロー波形は”流れの速さ”。プラスが吸気・マイナスが呼気・ゼロは圧平衡
  4. VCVは換気量を、PCVは吸気圧を固定するモード
    • 波形でフラットになっているところが、そのモードで固定している値
  5. 圧波形ではPEEPと吸気圧(above PEEP)を読む
    • 底→てっぺん→差分の3ステップでパッと拾えるようになる
  6. VC・PC・PSVは”吸気が終わる引き金”が違う
    • 量/時間/流量の減衰率。ここを押さえると同調性まで評価できる

🎯 第2回のゴール(再掲)

波形を見て「これはVCだな」「これはPCだな」が判断できるようになる

💡 吹き出し|あつし

「人工呼吸器の勉強って、設定値の暗記から入りがち。でも、まず波形が”何を測って何を表しているか”を腹落ちさせるほうが、結局いちばん早いんだ。波形が読めれば、設定の意図も、患者さんとの同調性も、ぜんぶ目で見て判断できるようになる。今日のセミナーは、その入り口だよ。」


どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

人工呼吸器のグラフィックって、最初は本当にとっつきにくいですよね。でも、「3つの波形が何を表しているか」「VCとPCはどこを固定するモードか」──この2つを押さえるだけでも、モニターの見え方は大きく変わってきます。
今日のセミナーを聞いた後、ぜひ勤務先のモニターで、いま回っている人工呼吸器の波形をじっくり眺めてみてください。フロー波形は四角ですか?それとも立ち上がってから減衰していますか?──それだけで、VCかPCかが見抜けるはずです。
5月はここからさらに、圧やフローの波形からコンプライアンス・気道抵抗を読む話、非同調の見つけ方へと踏み込んでいきます。一緒にステップアップしていきましょう。
わからない点や「こんな時どうする?」という質問があれば、
ぜひQラボのチャットやマシュマロで聞いてくださいね。