学習

ショックを見逃さない【5つのサインをきっかけに紐解こう】

「血圧は110/70です」

この報告を聞いて、「大丈夫そうだな」と思いませんでしたか?

でも、その患者さんの脈拍が130回/分だったら?

実は、血圧だけ見ていると、ショックを見逃すことがあるんです。


血圧が下がるのは「最後」

前回の記事で、「呼吸回数が急変の最初のサイン」という話をしました。

同じように、血圧低下もショックの初期には現れないことが多いんです(1,2)。

⚠️ 代償機構を理解しよう

私たちの体は、出血や脱水でショックになりそうなとき、以下の順番で代償しようとします:

  1. 心拍数を上げる:まず頻脈になる
  2. 末梢血管を収縮:手足が冷たく、蒼白になる
  3. 血圧を維持:ここまでは「代償性ショック」
  4. 血圧が低下:代償が破綻した状態

つまり、血圧が下がったときには、すでに体の代償機構が限界に達している可能性があります(1)。

💡 新人さんへ

「血圧正常=大丈夫」と思い込まないことが大切です。特に外傷や消化管出血の患者さんでは、血圧が維持されていても出血が進んでいることがあります(2)。


Shock Index(ショック・インデックス)とは

そこで役立つ一つの指標が、Shock Index(SI)です(2,3)。

💡 Shock Indexの計算式

SI = 心拍数 ÷ 収縮期血圧

例:心拍数100、血圧100 → SI = 1.0

計算はとてもシンプル。心拍数を収縮期血圧で割るだけです。

✅ Shock Indexの評価

Shock Index 評価
0.5〜0.7 正常
0.9〜1.1 要注意(約1Lの出血を示唆)
1.5以上 重症ショック(約2L以上の出血を示唆)

最初の例に戻ると、血圧110/70、脈拍130の患者さんは…

SI = 130 ÷ 110 = 1.18

これは「要注意〜重症」の範囲。血圧だけ見ていたら見逃すところでした(3)。


Shock Indexの使いどころ

Shock Indexは、特に出血性ショックの評価に有用です(2,3)。

💡 こんな場面で使おう

  • 外傷患者:出血量の推測に
  • 消化管出血:吐下血の患者さん
  • 産科出血:分娩後出血など
  • 術後患者:術後出血の早期発見

💡 臨床のコツ

ただし、Shock Indexは出血性ショックを想定して作られた指標です。敗血症や心原性ショックなど、他のタイプのショックでは解釈に注意が必要です(3)。


ショックの5P

Shock Indexは数字で評価できる便利なツールですが、身体所見も同じくらい大切です(1,4)。

ショックを早期に発見するための身体所見を、「5P」として覚えておきましょう。

📋 ショックの5P

5P 意味 見方
Pallor 蒼白 顔色、結膜、爪床の色
Perspiration 冷汗 額、手掌の発汗
Prostration 虚脱 ぐったり、意識レベル低下
Pulselessness 脈拍微弱 橈骨動脈の触知
Pulmonary distress 呼吸困難 頻呼吸、努力呼吸

これらは、体が「ショック状態だ」と叫んでいるサインです(4)。


末梢を見る習慣をつけよう

5Pの中でも、特に意識してほしいのが末梢の観察です(1,4)。

📊 末梢循環の評価

  • 四肢の温度:冷たい?温かい?
  • 皮膚の色:蒼白?チアノーゼ?まだら模様(網状皮斑)?
  • CRT(毛細血管再充満時間):爪床を押して離し、2秒以内にピンク色に戻るか
  • 脈の触知:橈骨動脈は触れるか?弱くないか?

💡 新人さんへのアドバイス

バイタルサインをとるとき、腕を触っていますよね。そのとき、温度や湿り気も感じてみてください。「冷たくて湿っている」と感じたら、それはショックの兆候かもしれません(1)。


「温かいショック」もある

ただし、すべてのショックで四肢が冷たくなるわけではありません(1,4)。

⚠️ 温かいショック(Warm Shock)

敗血症性ショックアナフィラキシーショックでは、末梢血管が拡張するため、四肢が温かく見えることがあります。

  • 「四肢が温かいから大丈夫」ではない
  • 敗血症では早期に抗菌薬投与が必要
  • 他のバイタルサイン(頻脈、頻呼吸、意識変容)と組み合わせて判断

ショックのタイプによって身体所見が異なることを覚えておきましょう(4)。


実践:患者さんを診るときの流れ

では、具体的にどう評価すればいいのでしょうか?

✅ ショックの評価手順

  1. 第一印象:ぐったりしていないか?顔色は?
  2. バイタルサイン:血圧、脈拍からShock Indexを計算
  3. 5Pの確認:蒼白、冷汗、虚脱、脈拍、呼吸状態
  4. 末梢の観察:四肢の温度、CRT
  5. 経時的変化:15〜30分後に再評価

この流れを習慣にしておくと、ショックの早期発見につながります(1,2)。


まとめ

✅ ショック評価のポイント

  1. 血圧低下は最後のサイン:血圧正常でも安心しない
  2. Shock Index = HR ÷ sBP:1.0以上は要注意
  3. 5P:Pallor, Perspiration, Prostration, Pulselessness, Pulmonary distress
  4. 末梢を触る習慣:冷たい・湿っている=要注意
  5. 温かいショックもある:敗血症、アナフィラキシーは四肢が温かいことも

引用文献

  1. Vincent JL, De Backer D. Circulatory shock. N Engl J Med. 2013;369(18):1726-1734.
  2. Birkhahn RH, et al. Shock index in diagnosing early acute hypovolemia. Am J Emerg Med. 2005;23(3):323-326.
  3. Cannon CM, et al. Utility of the shock index in predicting mortality in traumatically injured patients. J Trauma. 2009;67(6):1426-1430.
  4. 日本救急医学会. 標準救急医学 第5版. 医学書院; 2014.

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Shock Indexや5P、初めて聞いた方もいるかもしれません。

明日から、ぜひ試してみてください。「あれ、この患者さん、Shock Index高いかも?」と気づけるあなたになれますように。一緒に頑張りましょう。