「なんか、この患者さん、おかしいんです…」
新人看護師さんや研修医1年目の皆さん、こんな風に感じたことはありませんか?
バイタルサインを測って、血圧も脈拍も正常範囲。でも、なぜか違和感がある。
そんなとき、呼吸回数を測っていますか?
呼吸回数は「忘れられたバイタルサイン」
血圧、脈拍、体温、SpO₂…バイタルサインにはいろいろありますよね。でも、呼吸回数って、正直ちゃんと測っていない方も多いんじゃないでしょうか(1,2)。
実は呼吸回数は、急変の最初のサインとして、とても重要なバイタルサインなんです。
⚠️ なぜ呼吸回数が重要なのか
- 急変の6〜8時間前に変化する:血圧が下がるよりも早く変化する
- 代償機構の表れ:体が「何かおかしい」と感じているサイン
- 見逃されやすい:SpO₂だけ見て安心していませんか?
💡 臨床のコツ
SpO₂が正常でも、呼吸回数が増えていれば、体は頑張って代償している状態。「まだ大丈夫」ではなく、「すでに何かが起きている」サインです(1)。
なぜ「最初」に呼吸が変わるのか
私たちの体には、異常を代償する仕組みがあります。例えば、出血してショックになりそうなとき、体は血圧を維持しようと頑張ります(2,3)。
📋 代償機構の順番
- 呼吸回数・心拍数が増加:最初に変化
- 末梢血管が収縮:手足が冷たくなる
- 血圧が低下:これは最後の最後
つまり、血圧が下がったときには、すでに代償機構が限界に達している可能性があるんです。
だからこそ、呼吸回数の変化を早期に捉えることが大切なんですね(3)。
正常な呼吸回数って?
成人の正常な呼吸回数は、12〜20回/分です(1,2)。
✅ 呼吸回数の目安
| 呼吸回数 | 評価 |
|---|---|
| 12〜20回/分 | 正常 |
| 21〜24回/分 | やや速い(要注意) |
| 25回/分以上 | 早い(異常な可能性がある) |
| 8回/分以下 | 呼吸抑制(危険な可能性がある) |
22回/分以上は、Quick SOFAスコアの1項目にもなっています。つまり、呼吸回数が22回/分を超えたら、敗血症の可能性も考える必要があるということです(4)。
呼吸回数の正しい測り方
「呼吸回数って、どうやって測ればいいの?」という方もいるかもしれません。
💡 呼吸回数を測るコツ
- 最低30秒は測る:15秒×4だと誤差が大きい
- 患者さんに気づかれないように:「呼吸を数えます」と言うと意識してしまう
- 脈を測るフリをしながら:胸郭の動きを見る
- 腹式呼吸の人は腹部を見る:特に高齢者や肥満の方
💡 新人さんへのアドバイス
最初は「30秒も数えるの大変…」と思うかもしれません。でも、慣れてくると自然にできるようになります。大切なのは、「呼吸回数を測る習慣をつける」こと。これが急変を防ぐ第一歩です(2)。
本当に急いでいるときは、2秒に1回換気をしているかを参考にしても良いかもしれません(1分間に30回換気しているかがわかる)。
SpO₂が正常でも安心できない理由
「SpO₂が98%だから大丈夫」と思っていませんか?
実は、SpO₂は遅延指標なんです(1,3)。
⚠️ SpO₂の落とし穴
- 酸素投与中:呼吸状態が悪くてもSpO₂は維持される
- 代償中:頻呼吸で頑張ってSpO₂を維持している
- 急激な悪化:SpO₂が下がったときには手遅れのことも
だから、SpO₂と呼吸回数はセットで評価することが大切です。
「SpO₂は正常だけど、呼吸回数が28回/分」
これは、「今は大丈夫」ではなく、「頑張って代償している最中」というサインです(3)。
呼吸回数が増えたら何を疑う?
呼吸回数が増加している患者さんを見たら、以下を考えてみてください(1,2,4)。
📋 頻呼吸の原因を考える
- 呼吸器系:肺炎、気胸、肺塞栓、COPD増悪、喘息発作
- 循環器系:心不全、ショック、貧血
- 代謝性:敗血症、代謝性アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシス
- その他:疼痛、不安、発熱
💡 臨床のコツ
「呼吸回数が多い=呼吸器の問題」とは限りません。代謝性アシドーシスの代償として頻呼吸になっていることもあります。全身を診る視点を忘れずに(4)。
「何かおかしい」と感じたら
「なんとなくおかしい」という直感、大切にしてください。
その違和感を裏付けるのが、客観的なバイタルサインです。特に呼吸回数は、あなたの「何かおかしい」を数字で示してくれる強力な味方です(2)。
📊 呼吸回数を活かすために
- 習慣化する:すべての患者さんで呼吸回数を測る
- 経時的に見る:1回の値より、変化が大切
- 他のバイタルと組み合わせる:脈拍、血圧、意識状態
- 報告する:「呼吸回数が28回/分に増えています」
まとめ
✅ 呼吸回数のポイント
- 呼吸回数は急変の最初のサイン:血圧より6〜8時間早く変化する
- 正常は12〜20回/分:22回/分以上は要注意
- 30秒以上かけて測る:脈を測るフリをしながら
- SpO₂とセットで評価:SpO₂正常でも安心しない
- 「おかしい」と感じたら呼吸回数を確認:直感を数字で裏付ける
引用文献
- Cretikos MA, et al. Respiratory rate: the neglected vital sign. Med J Aust. 2008;188(11):657-659.
- Fieselmann JF, et al. Respiratory rate predicts cardiopulmonary arrest for internal medicine inpatients. J Gen Intern Med. 1993;8(7):354-360.
- Subbe CP, et al. Effect of introducing the Modified Early Warning score on clinical outcomes, cardio-pulmonary arrests and intensive care utilisation in acute medical admissions. Anaesthesia. 2003;58(8):797-802.
- Singer M, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016;315(8):801-810.
🩺 急変対応、もっと深く学びたい方へ
Qラボでは、急変対応の基本から実践まで、症例ベースで一緒に学んでいます。
「この患者さん、大丈夫かな?」そんな不安を自信に変えていきましょう。
どうですか?あなたの感想を聞かせてください。
呼吸回数、今まで「なんとなく」で測っていませんでしたか?
急変の予兆は、見逃さなければ防げることも多いんです。そして、呼吸回数はその最初のサイン。
明日からの臨床で、ぜひ意識してみてください。「あれ、呼吸回数増えてる?」と気づけるあなたは、きっと患者さんの命を守れる医療者になれます。一緒に頑張りましょう。





