「鎮静中の患者さん、何かできることはないですか?」
ICUでの早期リハビリテーションが重要だと分かっていても、鎮静が深い患者さんや循環動態が不安定な患者さんでは、積極的な運動療法が難しいことがあります。
そんな時に注目されているのが、EMS(電気刺激療法)や振動療法といった「受動的リハビリテーション」です(1,2)。
EMSとは
EMS(Electrical Muscle Stimulation:電気刺激療法)は、電気刺激によって筋肉を収縮させるリハビリテーション手法です(1,2)。
✅ EMSの特徴
- 原理:電気刺激で筋肉を人工的に収縮させる
- 対象:意識がない患者さん、鎮静中の患者さんにも適用可能
- 部位:主に大腿四頭筋など大きな筋肉
- 侵襲性:非侵襲的、ベッドサイドで実施可能
患者さん自身が動けなくても、筋肉を動かすことができる。これがEMSの最大のメリットです(1)。
💡 臨床のコツ
「動けないから何もできない」ではなく、「動けなくても筋肉を動かす方法がある」という発想を持ちましょう(2)。
EMSの効果
ICU患者さんに対するEMSの効果が、複数の研究で報告されています(1,3)。
📋 EMSの報告されている効果
- 筋萎縮の予防・軽減:筋肉量の維持に寄与
- 筋力低下の予防:ICU-AWの軽減
- 微小循環の改善:血流増加
- 人工呼吸器離脱の促進:一部の研究で報告
ただし、すべての研究で一貫した結果が出ているわけではありません。EMSは「補助的な手段」として位置づけるのが適切です(3)。
EMSの実際
EMSをどのように実施するのか、基本的な流れを確認しましょう(1,2)。
💡 EMSの実施方法
- 電極を貼付:大腿四頭筋などの対象筋に
- パラメータ設定:周波数、パルス幅、強度を調整
- 刺激開始:筋収縮が視認できる強度に
- 実施時間:1回30-60分、1日1-2回が一般的
- 評価:筋収縮の程度、皮膚の状態を確認
⚠️ EMSの注意点
- ペースメーカー:禁忌または要注意
- 皮膚障害:電極部位の発赤、熱傷に注意
- 浮腫:強いむくみがあると効果が減弱
- 深部静脈血栓症:リスクがある場合は慎重に
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振動療法とは
振動療法(Vibration Therapy)は、機械的な振動刺激を利用したリハビリテーション手法です(4,5)。
✅ 振動療法の種類
- 全身振動療法(WBV):振動プレートの上に立つ・座る
- 局所振動療法:特定の筋肉や部位に振動を与える
振動刺激は、筋紡錘を刺激して筋収縮を促し、神経筋機能を活性化すると考えられています(4)。
振動療法の効果
ICUやリハビリテーション領域での振動療法の効果が報告されています(4,5)。
📋 振動療法の報告されている効果
- 筋力増強:神経筋機能の活性化
- バランス機能改善:固有感覚の刺激
- 血流改善:微小循環の促進
- 骨密度維持:長期臥床による骨量減少の予防
💡 臨床のコツ
EMSも振動療法も、「能動的なリハビリができるようになるまでの橋渡し」として活用しましょう(5)。
受動的リハビリと能動的リハビリの組み合わせ
EMSや振動療法は、能動的なリハビリテーションと組み合わせることで効果を発揮します(2,5)。
📊 リハビリテーションの段階的アプローチ
| 段階 | 患者の状態 | リハビリ内容 |
|---|---|---|
| Phase 1 | 深い鎮静、不安定 | EMS、関節可動域訓練、体位変換 |
| Phase 2 | 浅い鎮静、やや安定 | 座位練習、振動療法、EMS併用 |
| Phase 3 | 覚醒、安定 | 立位・歩行練習、能動的運動 |
栄養療法との連携
リハビリテーションの効果を最大化するには、栄養療法との連携が欠かせません(2,5)。
✅ リハビリ+栄養の相乗効果
- 蛋白質摂取:リハビリと組み合わせると筋合成が促進
- 適切なカロリー:リハビリに必要なエネルギーを供給
- タイミング:リハビリ前後の栄養投与が効果的とも
💡 臨床のコツ
「リハビリだけ」「栄養だけ」ではなく、両方を組み合わせることで効果が最大化します(5)。
まとめ
✅ EMSと振動療法のポイント
- EMS:電気刺激で筋収縮を誘発、鎮静中でも実施可能
- 振動療法:機械的振動で神経筋機能を活性化
- 補助的な位置づけ:能動的リハビリへの橋渡し
- 栄養療法との連携:リハビリ+栄養で効果を最大化
- チームアプローチ:PT・OT・看護師・医師の協働
引用文献
- Maffiuletti NA, Roig M, Karatzanos E, Nanas S. Neuromuscular electrical stimulation for preventing skeletal-muscle weakness and wasting in critically ill patients: a systematic review. BMC Med. 2013;11:137.
- Parry SM, Berney S, Warrillow S, et al. Electrical muscle stimulation in the intensive care setting: a systematic review. Crit Care Med. 2012;40(7):2098-2107.
- Burke D, Gorman E, Stokes D, Lennon O. An evaluation of neuromuscular electrical stimulation in critical care using the ICF framework: a systematic review and meta-analysis. Clin Respir J. 2016;10(4):407-420.
- Rittweger J. Vibration as an exercise modality: how it may work, and what its potential might be. Eur J Appl Physiol. 2010;108(5):877-904.
- Wollersheim T, Woehlecke J, Krebs M, et al. Dynamics of myosin degradation in intensive care unit-acquired weakness during severe critical illness. Intensive Care Med. 2014;40(4):528-538.
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