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抗菌薬の効果判定【Qラボセミナー 2026年2月 その3】

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0:00「CRPが下がらないから抗菌薬変更」の落とし穴

2026年2月のQラボ、第3回セミナーです。10分で学ぶ抗菌薬シリーズ、いよいよ最終回ですね。
今回のテーマは抗菌薬の効果判定。「CRPが下がらない、どうしよう」っていう場面、皆さん経験あるんじゃないでしょうか。
抗菌薬を始めたはいいけど、なかなかCRPが下がらない。じゃあ抗菌薬変えた方がいいのかな、広域にした方がいいのかな、っていうね、そういう悩みは僕もよく経験しました。
第1回では「発熱=抗菌薬じゃないよ」という話を、第2回では「感染症のトライアングル」で抗菌薬の選び方を学びました。今日はその続きで、始めた抗菌薬をどう評価するか、その考え方を一緒に整理していきましょう。


0:53よくある場面:CRPが下がらない、どうしよう?

こんな場面、身に覚えはないでしょうか。

🤔 こんな判断、していませんか?

  • CRPが下がらないので、抗菌薬変更をお願いします」
  • 「まだ発熱しているから、広域に変更した方がいいんじゃないか」
  • 白血球が下がらない、escalationしないといけないんじゃないか」

全部、一見もっともらしいんですよね。でもこの判断、実は結構危ないことがあるんです。
CRPとか発熱だけで抗菌薬の効果判定をするっていうのは、当てずっぽうの判断になりかねない。今日はそのあたりをお話ししていきます。


1:47CRP・発熱で判断してはいけない理由

じゃあなんでCRPや発熱で判断しちゃいけないのか。それぞれの指標の問題点を整理してみましょう。

⚠️ CRP・発熱・白血球で判断してはいけない理由

指標 問題点
CRP 炎症全般で上昇。手術後、外傷、膠原病、悪性腫瘍でも上がる。感染特異性が低い
発熱 薬剤熱、DVT、非感染性でも発熱する。第1回で学んだ通り、ICUの発熱の50%は非感染性
白血球 ストレス、ステロイドでも変動する。感染の改善を反映しているとは限らない

つまりですね、これらの指標は「感染が治った」という指標ではないんですよ。ここ、すごく大事なポイントです。
CRPが高いままでも感染は良くなっていることもあるし、逆にCRPが下がっていても感染が残っていることもある。じゃあ何で判断すればいいのか。

💡 吹き出し|あつし

「CRPはあくまで『炎症のマーカー』であって、『感染のマーカー』じゃないんだ。CRPの数字とだけにらめっこするのではなく、もっと直接的な指標で判断していこう。」


2:46臓器特異的パラメータを使う

答えはシンプルです。感染臓器の所見で判断する。これが抗菌薬の効果判定の基本になります。
前回のセミナーで「感染症のトライアングル」の1つ目の頂点として臓器の話をしましたよね。効果判定でもこの「臓器」がカギになるんです。
感染臓器ごとに、効果判定に使うべきパラメータが決まっています。

🔬 臓器特異的パラメータ一覧

感染巣 効果判定に使う指標
肺炎 呼吸数、P/F比、喀痰グラム染色の菌体数
心内膜炎 血液培養の陰性化
腹腔内感染 腹膜刺激徴候、ドレーン排液性状
尿路感染 尿グラム染色の菌体数、尿中白血球
髄膜炎 意識状態、頭痛、髄液グラム染色
皮膚軟部組織 局所所見(発赤・腫脹・熱感)

こういうふうにね、感染臓器に応じた指標で判断するっていうのが大事なんですよね。
CRPの数値を追いかけるのではなくて、「この患者さんの感染臓器の所見はどうなっているか?」を毎日確認する。これが抗菌薬の効果判定の正しいアプローチです。


4:13肺炎の効果判定:具体例

じゃあ具体例として、肺炎の効果判定を見てみましょう。

✅ 肺炎で見るべき指標

改善の手がかりになるもの

  • 呼吸数の改善(30回/分 → 18回/分)
  • P/F比の改善(200 → 350)
  • 酸素投与量の減少(5L → 2L)
  • 喀痰グラム染色の菌体減少

判断を誤りやすいもの

  • 胸部X線:改善が遅れる(1〜2週間後)
  • CRP:非特異的、遅延する

胸部X線っていうのは改善が遅れるんですよ。1〜2週間後にやっと改善してくるっていうことが多いので、X線で判断しちゃうと判断が遅れるんですよね。
だから「画像やCRPより、呼吸状態を見る」っていうのが肺炎の効果判定のポイントになります。
呼吸数が落ち着いてきた、酸素の量を減らせるようになった、患者さんが楽そうにしている。こういう臨床的な所見の方が、検査データよりもよっぽど信頼できる指標なんですよね。

「肺炎の効果判定で一番頼りになるのは、呼吸状態の変化なんだ。CRPが下がらなくても、呼吸数が落ち着いてP/F比が改善していれば、治療は効いていると考えていいんだよ。」


5:29治療失敗?と思ったらチェックすべき5項目

そうは言っても、なんかやっぱり良くなってない気がする、治療失敗なんじゃないか、っていう場面もあると思うんですよね。
そういう時に、すぐに抗菌薬を変更する、広域にするっていう前に、まずチェックすべき5項目があります。

📋 治療失敗?と思ったら:5つのチェックポイント

  1. 効果判定の方法は正しいか?
    • → 臓器特異的パラメータをちゃんと使っていますか?
    • → CRPだけで判断していませんか?
  2. ドレナージは十分か?
    • → 膿瘍があったら、抗菌薬だけでは治らない
    • → 閉塞があったら、それを解除しないと治らない
  3. 自然経過を見誤っていないか?
    • → 腎盂腎炎は2〜3日発熱が続くことがある
    • → 1日目で「効いてない!」は早すぎる
  4. 投与量・投与間隔は適切か?
    • → 腎機能に応じた調整はできていますか?
    • → 体重に応じた用量設定は適切ですか?
  5. 診断は正しいか?
    • → 非感染性発熱の可能性は?
    • → 新規の感染が合併している可能性は?

この5つをまずチェックしてから、抗菌薬の変更を考えるっていうのが大事ですね。安易にescalationしないっていうことです。
特にですね、2番目の「ドレナージ」はとても重要で、膿瘍とか閉塞性の胆管炎とか、外科的な介入が必要なケースでは抗菌薬だけでは治らないんですよね。抗菌薬が効いていないのではなくて、そもそも抗菌薬だけでは解決できない問題が隠れている、ということもあるんです。

🚨 安易なescalationが招くリスク

  • 耐性菌の誘導:不必要な広域抗菌薬が耐性菌を生む
  • 副作用の増加:広域であればあるほど、腸内細菌叢への影響が大きい
  • 真の原因を見逃す:抗菌薬を変えることで安心してしまい、ドレナージの遅れなどにつながる

7:30プロカルシトニン(PCT)の活用

最後にですね、プロカルシトニン(PCT)の話をちょっとだけしておこうと思います。
CRPの代わりに使える指標として、PCTが注目されています。CRPと違って、細菌感染に比較的特異的なんですよね。

✅ プロカルシトニン(PCT)の特徴

  • 細菌感染に比較的特異的
  • 治療反応性の評価に有用
  • 抗菌薬終了の判断に使える

💡 PCT低下アルゴリズム(終了を検討する目安)

ピーク値から80%以上低下 or 0.5ng/mL未満

  • ピーク値から80%以上低下 → 抗菌薬終了を検討
  • 0.5ng/mL未満 → 抗菌薬終了を検討

ただね、注意点もあります。

⚠️ PCTの注意点

  • 腎機能低下で偽高値になることがある
  • あくまで参考指標であり、PCTだけで全てを決めるものではない
  • 臓器特異的パラメータと組み合わせて判断することが大切

PCTが全てを解決してくれるわけじゃないんですけど、CRPよりは使える指標かなっていうところですね。臓器特異的パラメータと合わせて活用すると、より自信を持った効果判定ができるようになります。


8:46まとめ:培養結果を待って、患者を見て、判断する

✨ 今日のポイント:抗菌薬の効果判定

  1. CRP・発熱で判断しない
    • 非特異的で遅延する指標に振り回されない
    • CRPが高い=効いてない、ではない
  2. 臓器特異的パラメータを使う
    • 肺炎なら呼吸数・P/F比、尿路感染なら尿グラム染色…
    • 感染臓器の所見で判断する
  3. 効かないと思ったら5項目をチェック
    • 効果判定の方法・ドレナージ・自然経過・投与量・診断
    • 安易にescalationしない

🎯 シリーズ全体のゴール

「培養結果を待って、患者を見て、判断する」

「CRPが下がらないからって焦らなくていいんだ。ちゃんと患者さんを診て、臓器特異的な指標で判断する。それでも効いてない気がしたら、まず5項目をチェックする。この順番を守るだけで、抗菌薬の効果判定はぐっと変わるよ。」


10分で学ぶ抗菌薬シリーズ:全3回を振り返る

📖 抗菌薬シリーズ全体像

テーマ 学んだこと
第1回 発熱≠感染症 発熱の鑑別(7Ds)、身体診察とデバイス確認
第2回 感染症のトライアングル 臓器・微生物・患者背景の3つで抗菌薬を選ぶ
第3回 抗菌薬の効果判定 CRPに頼らず臓器特異的パラメータで判断する

参考文献

  • O’Grady NP, et al. SCCM/IDSA Guidelines for Evaluation of New Fever in Critically Ill Adult Patients. 2024 Update.
  • Schuetz P, et al. Effect of procalcitonin-guided antibiotic treatment on mortality in acute respiratory infections: a patient level meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2017;10(10):CD007498.
  • de Jong E, et al. Efficacy and safety of procalcitonin guidance in reducing the duration of antibiotic treatment in critically ill patients: a randomised, controlled, open-label trial. Lancet Infect Dis. 2016;16(7):819-827.
  • Halm EA, et al. Time to clinical stability in patients hospitalized with community-acquired pneumonia. JAMA. 1998;279(18):1452-1457.
  • 日本版敗血症診療ガイドライン2024 (J-SSCG2024).

どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

「CRPが下がらない=抗菌薬が効いてない」って、僕も研修医の頃は思っていました。正直に言うと、CRPの数値に一喜一憂していた時期もあります。
でも、臓器特異的パラメータという考え方を知ってからは、「この患者さんの肺炎はちゃんと良くなっている」「CRPは高いけど、呼吸数が落ち着いて酸素も減らせているから大丈夫」と、自信を持って判断できるようになったんですよね。
看護師さんにとっても、「なぜ医師がCRPが高いのに抗菌薬を変更しないのか」がわかると、患者さんの観察ポイントがぐっと明確になるはずです。
今回で10分で学ぶ抗菌薬シリーズは完結です。第1回の「発熱≠感染症」、第2回の「感染症のトライアングル」、そして今回の「効果判定」。この3つを意識するだけで、抗菌薬に対する考え方がだいぶ変わってくると思います。
一緒に学び、一緒に悩み、そして一緒に成長していきましょう。