「カルテ、これで合ってるのかな……」
研修医として働き始めると、カルテの書き方で悩む場面がたくさんありますよね。
S欄に何を書けばいいのか分からない。アセスメントが薄い気がする。
プロブレムリストが増える一方……。
私も研修医1年目のとき、同じように悩んでいました。
救急外来で忙しく動きながら、「この書き方で大丈夫かな」と不安になることの連続だったんです。
今回は、以前セミナーで研修医の皆さんから実際に寄せられた質問に、救急医の視点からお答えしていきます。
Q1. S欄に患者さんの主訴以外、何を書いていいか分からない
📩 研修医からの質問
入院患者さんのカルテを記載する際、S欄に患者さんの主訴以外に何を記載していいか分からないです。
これ、本当によく聞く悩みです。私も最初は「主訴を書いたら終わり」になってしまって、S欄がスカスカでした。
結論から言うと、長ければいいというものではないんです。大切なのは、「その人の病態に関連した訴え」を拾うこと。
たとえば肺炎の患者さんなら、「咳が出る」「痰が絡む」「息苦しい」「熱っぽい」といった呼吸器症状に関連する訴えを丁寧に聴取して書く。逆に、肺炎とあまり関係なさそうな訴え(「最近肩が凝る」など)は、わざわざ書かなくていいんです。
✅ S欄に書くコツ
- 病態に関連した訴えを選ぶ:全部書く必要はない
- 神経症状や不定愁訴は医学用語に変換:「ふらふらする」→「浮動性めまい」など
- 患者さんの言葉と医学用語を併記:「胸がドキドキする(動悸)」
特に神経症状や不定愁訴は、患者さんの言葉をそのまま書くだけでなく、自分で医学用語に変換して併記するといいですね。これは後からカルテを見返すときにも役立ちます。
Q2. 検査結果からのアセスメントが薄い思考しかできない
📩 研修医からの質問
自分の知識不足で検査結果からアセスメントをする際に薄い思考しかできないことが少し困っています。
まず言いたいのは、濃厚なアセスメントが最初からできる人なんていないということです。私だって研修医のときは「この検査値、何を意味するんだろう……」と途方に暮れることばかりでした。
むしろ、「アセスメントできない」と気づけていること自体が、すごく大事なんです。なぜなら、自分の足りない知識を把握できているから。
「この検査値の解釈が分からない」と分かれば、そこを調べればいい。実は、これが一番効率的な勉強法なんですよね。
💡 アセスメント力を上げるコツ
- 「分からない」を言語化する:何が分からないか明確にする
- 1日1つだけ疑問を解消する:欲張らない
- 調べたことをカルテに書く:アウトプットすることで定着する
焦らなくて大丈夫です。ひとつずつ疑問を解消していくうちに、気づいたら「あれ、前より考えられるようになってる」という瞬間が来ます。
Q3. プロブレムリストを減らせない、介入していないプロブレムがずっと残る
📩 研修医からの質問
カルテでいえばプロブレムリストを作った後に減らせないので、介入していないプロブレムがずっと残ってしまいます。
プロブレムリストが増える一方……これも研修医あるあるですよね。私も、どんどん増えていくリストを見て「これ全部対応しなきゃいけないの?」と途方に暮れていました。
大切なのは、プロブレムに気づくことと、整理することは別だということ。
SとOの情報を根拠に挙げたプロブレムであれば、残しておくのはOKです。ただし、入院している病態に関係のないプロブレムや、すでに介入し終えたプロブレムは、毎日のカルテに残す必要はありません。
📋 プロブレムリストの整理法
- Active Problem:今介入しているもの → 毎日記載
- Inactive Problem:今は介入していないが忘れてはいけないもの → 週間サマリにまとめる
- 解決済み:介入し終えたもの → 当日のみ記載し、翌日以降は削除
「どのプロブレムに介入すべきか」を判断することが大事です。忙しくて介入できていない理由があるなら残し、この入院期間中に不要と判断しているなら一度明記して、毎日のカルテには残さない。
プロブレムに気づける力は素晴らしいことです。あとは、なるべく整理することを心がけていきましょう。
Q4. 認知症や意識障害の患者さんにSが取りづらい
📩 研修医からの質問
救急外来や病棟で認知症があったり意識状態が悪い患者さんにSが取りづらくて困ることがあります。
これは救急医として日常的に直面する問題です。救急外来では、意識障害で搬送されてくる患者さんも多いですからね。
前提として、S欄には「患者さんの主観的情報」を書くのが原則です。でも、プロブレムに関係ありそうな情報であれば、患者家族の訴えもSに含めてOKなんです。
たとえば「家族によると、朝から様子がおかしかった」「普段はもっとしっかりしているとのこと」といった情報は、立派なSになります。
💡 Sが取れないときのポイント
- 家族・介護者からの情報:「家族によると〜」と明記してSに書く
- 救急隊からの情報:発見時の状況なども有用
- 意識障害 vs 認知症の区別:普段との違いを確認する
大切なのは、意識障害なのか、認知症なのかをしっかり区別すること。これは結構重要で、意識障害であればO(身体診察・検査)として緊急対応が必要になります。「普段からこうなんですか?」と家族に確認する習慣をつけておくといいですね。
Q5. 日々の勉強方法、教科書の内容をいかに現場で活用するか
📩 研修医からの質問
日々の勉強方法、教科書参考書の内容をいかに活用するかを知りたいです。
これは研修医にとって永遠のテーマですよね。教科書を読んでも、いざ臨床で使おうとすると「あれ、何だっけ……」となる。私も何度も経験しました。
何を勉強するか:RIME modelを羅針盤に
医学教育でよく使われるRIME modelが参考になります。研修医1年目は、まずReporter(報告者)としての力を身につけることが大切。
✅ Reporterとして身につけるべきこと
- S(病歴聴取):場面ごとの聴取法、対話の手法
- O(身体所見):所見の取り方
- Report(プレゼン):結論から言う練習
どう勉強するか
ここがポイントなんですが、まずは本を我慢して、人に上手に教えてもらうことをおすすめします。
色々な人に聞く。次にあんちょこ本を数十秒読む。1日2〜3個だけメモして、次の日に見返す。これだけで十分です。
📊 効率的な勉強の流れ
- まず人に聞く:上級医、先輩、同期に聞く
- あんちょこ本を数十秒読む:深追いしない
- 1日2〜3個だけメモ:欲張らない
- 翌日見返す:繰り返しで定着
その上で、読んだ内容を患者に適用できるか考え、Assessment に記載する。この繰り返しが一番力になります。
余裕をどう生むか
今の時期、「雑用」に思えることをこなすのは、実は後の効率につながります。
ある程度は許容して、雑多だけどやらないといけないことは早く学び取ってルーチン化する。
そして、1日に勉強することを2〜3個に制限する。これが大事です。あんまり高い目標設定は疲れてしまいますね。
Q6. 入院患者のカルテ記載、プランは上級医の丸写しでいい?
📩 研修医からの質問
入院患者のカルテ記載において、プランは上級医のを丸写しでいいのでしょうか?
これは正直に言います。コピペは本当に時間がないとき以外はやめたほうがいいです。
なぜかというと、コピペは癖になるんですよね。癖になると、思考しなくなる。
そして、周りに「あの研修医、考えてないな」と思われて損することがあります。
A/P(Assessment/Plan)は、まず自分で一考することが大事です。その上で、上級医のプランが納得いくなら、同じ記載で全然いいと思います。
⚠️ コピペの落とし穴
- 癖になる:一度楽を覚えると抜け出しにくい
- 思考停止:考える力がつかない
- 周囲からの評価:「考えていない研修医」と思われる
- 成長の機会を失う:間違えることで学べるチャンスを逃す
大切なのは、「なぜこのプランなのか」を自分の頭で考えること。最初は間違えていいんです。間違えて、上級医に指摘されて、「あ、そういうことか」と理解する。その繰り返しが成長につながります。
まとめ
✅ カルテ記載のポイント
- S欄:病態に関連した訴えを選んで書く。長さより質。
- アセスメント:薄くてもOK。「分からない」に気づくことが成長の第一歩。
- プロブレムリスト:Active/Inactiveを整理する。
- Sが取れない患者:家族・救急隊からの情報も活用。
- 勉強法:1日2〜3個に絞る。まず人に聞く。
- コピペ:時間がないとき以外は避ける。まず自分で考える。





