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急性期栄養療法、いつ始める?【早期経腸栄養の意義とタイミング】

「この患者さん、いつから食事入れていいですか?」

ICUや救急の現場で、こんな質問をしたこと、聞いたこと、ありませんか?

「まずは呼吸・循環を安定させてから」と。

でも実は、栄養療法は急性期治療の重要な柱の一つなんです。

この記事では、急性期栄養療法の基本と、早期経腸栄養の意義について解説します(1,2)。


なぜ急性期に栄養が大切なのか

重症患者さんの体の中では、何が起きているのでしょうか(1,2)。

💡 重症患者の代謝変化

  • 異化亢進:体は筋肉を分解してエネルギーを得ようとする
  • 蛋白分解:1日あたり筋肉量の1-2%が失われることも
  • インスリン抵抗性:高血糖になりやすい
  • 免疫機能低下:感染リスクが上昇

何もしなければ、重症患者さんは急速に筋肉を失い、回復が遅れてしまいます。

これがICU-acquired weakness(ICU獲得性筋力低下)の一因にもなります(2)。

💡 臨床のコツ

「栄養は後回し」ではなく、「栄養も治療の一部」という意識を持ちましょう(1)。


早期経腸栄養のメリット

「早期経腸栄養」とは、入院後24-48時間以内に経腸栄養を開始することを指します(1,3)。

✅ 早期経腸栄養のメリット

  • 腸管粘膜の維持:絨毛の萎縮を防ぎ、バリア機能を保つ
  • Bacterial Translocationの予防:腸内細菌が血中に移行するのを防ぐ
  • 感染性合併症の減少:肺炎などの発症リスク低下
  • ICU滞在日数の短縮:早期回復につながる

腸は「使わないと衰える」臓器です。

経腸栄養で腸を動かすことで、腸管機能が維持されます(3)。


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経腸栄養 vs 経静脈栄養

栄養投与経路には、経腸栄養(EN)と経静脈栄養(PN)があります(1,4)。

📋 経腸栄養 vs 経静脈栄養

項目 経腸栄養(EN) 経静脈栄養(PN)
投与経路 胃管、経腸チューブ 中心静脈、末梢静脈
腸管機能 維持される 使わないと萎縮
感染リスク 比較的低い カテーテル感染のリスク
コスト 低い 高い

原則として、腸が使えるなら経腸栄養が第一選択です。

「If the gut works, use it.(腸が動くなら腸を使え)」という格言があります(4)。

💡 臨床のコツ

完全に腸が使えない場合を除き、まずは経腸栄養を試みましょう(1)。


Permissive Underfeeding(許容性低栄養)

「早期に栄養を開始するなら、たくさん入れた方がいいのでは?」と思うかもしれません。

でも、急性期には「Permissive Underfeeding」という考え方が重要です(2,5)。

⚠️ Permissive Underfeeding(許容性低栄養)とは

  • 定義:目標カロリーの60-70%程度で管理すること
  • 理由:急性期にフルカロリーを入れると、かえって害になることがある
  • 蛋白質は確保:カロリーは控えめでも、蛋白質(1.2-2.0 g/kg/日)は十分に

急性期に過剰なカロリーを投与すると、高血糖、脂肪肝、CO₂産生増加(呼吸負荷)などの問題が起きます(5)。

💡 臨床のコツ

「カロリーは控えめ、蛋白質はしっかり」が急性期栄養のポイントです(2)。


経腸栄養を始められないケース

すべての患者さんに早期経腸栄養ができるわけではありません(1,4)。

⚠️ 経腸栄養を避けるべき状況

  • 腸閉塞・イレウス:機械的閉塞がある場合
  • 循環動態が不安定:高用量の昇圧剤が必要な場合
  • 消化管出血:活動性の出血がある場合
  • 腹部コンパートメント症候群:腹腔内圧が高い場合

ただし、「昇圧剤を使っているから」というだけで経腸栄養を控える必要はありません。循環が安定していれば、少量から開始できます(4)。


まとめ

✅ 急性期栄養療法のポイント

  1. 栄養も治療の一部:後回しにしない
  2. 早期経腸栄養:24-48時間以内に開始を目指す
  3. 腸が使えるなら腸を使う:経腸栄養が第一選択
  4. Permissive Underfeeding:カロリー控えめ、蛋白質しっかり

引用文献

  1. McClave SA, Taylor BE, Martindale RG, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.). JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2016;40(2):159-211.
  2. Singer P, Blaser AR, Berger MM, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr. 2019;38(1):48-79.
  3. Reintam Blaser A, Starkopf J, Alhazzani W, et al. Early enteral nutrition in critically ill patients: ESICM clinical practice guidelines. Intensive Care Med. 2017;43(3):380-398.
  4. Elke G, van Zanten AR, Lemieux M, et al. Enteral versus parenteral nutrition in critically ill patients: an updated systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care. 2016;20(1):117.
  5. Arabi YM, Aldawood AS, Haddad SH, et al. Permissive Underfeeding or Standard Enteral Feeding in Critically Ill Adults. N Engl J Med. 2015;372(25):2398-2408.

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