- 院内急変を見抜こう:A=気道の異常をどう評価するか
- 気道の基礎知識と解剖
- 上気道閉塞が最も多い
- 喉頭の解剖をイメージする
- 下気道の閉塞について
- 気道の異常は最上流で緊急度が高い
- 完全閉塞は数分で心停止に至る
- 気道の異常のメカニズム:解剖学的異常
- 気道の異常のメカニズム:意識レベル低下
- チョークサイン:万国共通の窒息サイン
- 窒息解除の方法:背部叩打法とハイムリック法
- 2025年BLS・ALSガイドラインでの位置づけ
- プライマリーサーベイのポイント:バイタルだけに頼らない
- 気道評価の実践:①声かけ → ②聴診 → ③視診
- 聴診でストライダーを確認する
- 視診:頸部を見て・頸部を聞く
- 胸が上がっているから気道が開いている、とは限らない
- まとめ
- 動画で難しかったところ、質問はオープンチャットへ!
院内急変を見抜こう:A=気道の異常をどう評価するか
院内急変、本当にバタバタして焦りますよね。そんな時に「何から見るか」「どこに介入するか」を整理するのが、ABCDEアプローチの流れです。
今回は12月のテーマ「院内急変を見抜こう」の中でも、A=気道の異常をどう見抜くかに絞ってお話しします。
酸素の需給バランスを保つ流れのいちばん最初にあるのがA=気道。気道の異常は、数分で心停止に至ることもある超緊急事態です。
気道の解剖から評価のポイント、そして窒息解除の具体的な方法まで、明日から使える知識を一緒に整理していきましょう。
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気道の基礎知識と解剖
0:00~0:51
ABCDEアプローチやプライマリーサーベイの最上流に位置するのが気道です。
空気の流れ・酸素の取り込みをイメージしながら、「どの部位が閉塞すると、どう問題が出るのか」を考えるのが大事です。
例えば、鼻血で鼻腔が閉塞して、奥に垂れ込んで上咽頭をふさいでしまう場合がありますよね。
また、食道側から食物残渣や嘔吐物が逆流してくると、それがどのように気道を塞ぐかもイメージできるようになります。
上気道閉塞が最も多い
0:51~1:36
気道の異常の中でも、上気道閉塞が最も多いという点は、ぜひ押さえておいてください。
閉塞を起こしそうな病歴や受傷機転があるときは、「どうやって解除するか」を常に考えながら対応していくことが大切です。
その中でも気道管理の肝になるのが喉頭です。喉頭より下は、いわゆる下気道にあたります。
- 気道の異常は上気道閉塞が最も多い
- 喉頭が気道管理の肝になる
- 閉塞を起こしそうな病歴・受傷機転があれば、解除方法を常に考える
喉頭の解剖をイメージする
1:36~2:29
喉頭の解剖をあらためて見ていきましょう。喉頭蓋、声帯、声門などの構造物でできています。この視野は気管挿管のときに必ず登場します。
自分でサッと絵に描けるくらい、イメージしておくと本当に役立ちます。
「どの高さに声門があるか」を甲状軟骨、披裂軟骨、輪状軟骨との位置関係で覚えておくと、緊急時に気道確保するときにも迷いにくくなります。
- 喉頭蓋、声帯、声門の位置関係を把握する
- 気管挿管時の視野をイメージできるようにする
- 甲状軟骨・披裂軟骨・輪状軟骨との位置関係を覚える
下気道の閉塞について
2:29~3:19
声門より下、下気道についても少し復習します。下気道の閉塞は、気管内腫瘍や甲状腺腫瘍などによる圧迫で起こります。
甲状腺が気管を押していたり、気管内に腫瘍ができていたり、右・左の気管支に病変ができることもあります。
例えば左側に病変があるときは、あえて深く挿管して分離肺換気にし、右の気管支にチューブ先端を置いて右肺だけで換気する、といったICUでの介入が必要になることもあります。
さらに解剖を理解しておくと、誤嚥性肺炎や気道内異物は右に多い、という理由もイメージしやすくなります。右主気管支の方がより垂直に近い角度になっているからですね。
- 下気道閉塞は腫瘍や圧迫によって起こる
- 誤嚥性肺炎や気道内異物は右に多い(右主気管支が垂直に近いため)
- ICUでは分離肺換気などの高度な介入も必要になる
気道の異常は最上流で緊急度が高い
3:19~4:09
下気道でも、気管挿管チューブの先端の高さをイメージすることが大事です。レントゲンで見たときに、「深すぎず浅すぎず、この辺りがちょうどいい」という位置を、あらかじめ頭に入れておきましょう。
ではここから、具体的な気道の異常について話していきます。ABCDEアプローチの中でも、A=気道の異常は最上流にありますが、ここはとにかく緊急度が高いと覚えておいてください。
窒息をイメージするとわかりやすいですが、完全に気道が閉塞すると、空気も酸素も全く取り込めなくなります。
完全閉塞は数分で心停止に至る
4:09~5:02
完全閉塞した場合、数分で心停止に至ることもあります。院内急変の中でも、気道の異常はトップクラスで急いで対応しないといけない病態です。
救急医も本気で焦るところですね。
特に、妊婦さん・小児・高度肥満の患者さんは酸素の予備能が非常に少ないです。気道が閉じてから酸素が持つ時間が、通常よりもずっと短い。
気管挿管のときも、「この人はどれくらい早く低酸素・心停止に向かうか」を常に意識しておく必要があります。
本当に1分以内で悪化することもある、というのは覚えておいてください。
- 完全閉塞は数分で心停止に至る超緊急事態
- 妊婦・小児・高度肥満の患者は酸素予備能が少ない
- 1分以内で悪化することもある
気道の異常のメカニズム:解剖学的異常
5:02~5:58
ここから、気道の異常のメカニズムを考えてみます。
まず、解剖学的な異常で起きる場合。このときは確実な気道確保が必須です。
典型例が急性喉頭蓋炎です。喉頭蓋が高度に浮腫して、今にも閉塞しそうな状態ですね。こういう場合はなんとか挿管チューブを入れるか、危険と判断したら外科的気道確保をしてでも、確実に気道を守る必要があります。
気道の異常のメカニズム:意識レベル低下
5:58~6:29
一方で、解剖自体は正常でも起きる気道の異常もあります。ふつうに寝ているときは気道が保たれていますが、意識レベルが低下すると筋肉が弛緩して、咽頭の軟部組織が後方へ落ち込み、気道を圧迫してしまいます。
つまり、Aの異常は「腫瘍や浮腫などの構造的な問題だけ」ではなく、意識レベル低下だけでも起こりうるということです。
こういった患者さんには、必ずしもいきなり気管挿管や外科的気道確保が必要とは限りません。用手的な気道確保や、エアウェイ挿入だけで保てることも多いです。
このあたりの具体的な介入は、月末のセミナーでより詳しくお話ししようと思います。
- 解剖学的異常(急性喉頭蓋炎など)→確実な気道確保が必須
- 意識レベル低下による気道閉塞→用手的気道確保やエアウェイで対応可能なことも
- 気道の異常は構造的問題だけでなく、意識レベル低下だけでも起こる
チョークサイン:万国共通の窒息サイン
6:29~7:26
気道の緊急異常として、ぜひ覚えておいてほしいサインがあります。チョークサインといって、苦しそうに喉元に手を当てるしぐさのことです。上気道閉塞、つまり窒息が起きているときに、国籍問わずみんな同じような動きをします。まさに万国共通のサインです。
このサインが出たら超緊急。すぐに助けを呼び、救急車を依頼し、気道閉塞を解除する介入を直ちに行う必要があります。
窒息解除の方法はいくつかありますが、最近のガイドラインでは、まず背部叩打法を5回程度試すことが推奨されています。
- チョークサイン=喉元に手を当てるしぐさ(万国共通)
- このサインが出たら超緊急で窒息解除が必要
- まず背部叩打法を5回程度試す
窒息解除の方法:背部叩打法とハイムリック法
7:26~8:10
背部叩打法で解除できなければ、次のステップとしてハイムリック法(腹部突き上げ法)を行います。握りこぶしをみぞおちの少し下あたりに当てて、体を密着させて、上向きにグッと突き上げる方法ですね。
ただし、これは臓器損傷のリスクも高いので、自信がなければ、とにかく背部叩打法を繰り返すという選択肢もあります。
2025年BLS・ALSガイドラインでの位置づけ
8:10~9:09
これらの窒息解除は、2025年のBLS・ALSガイドラインでも「重要なスキル」として位置付けられています。背部叩打法をしっかり行うこと、場合によってはハイムリック法も検討すること。この2つは、世界的にも共通したスタンスになりつつあります。
窒息しやすいのは、やっぱり子どもですよね。おもちゃや大きな食べ物を飲み込んで、急に窒息してしまうことがあります。そのときの第一選択はやはり背部叩打法。背中をしっかり叩いて異物を出すことを目指します。それでもダメなら、胸骨圧迫を始めることも一つの選択肢です。
- 背部叩打法→ハイムリック法の順で試す
- ハイムリック法は臓器損傷リスクあり、自信がなければ背部叩打法を繰り返す
- 2025年BLS・ALSガイドラインでも重要なスキルとして位置づけ
- 小児の窒息は背部叩打法が第一選択
プライマリーサーベイのポイント:バイタルだけに頼らない
9:09~10:00
臨床で遭遇する「Aの異常」が、すべてわかりやすい窒息とは限りません。むしろ、分かりにくい気道の異常をどう評価するかが難しいところです。
そこであらためて、プライマリーサーベイのポイントをおさらいしましょう。「バイタルサインだけを当てにしない」。たとえサチュレーションが保たれていても、気道が閉塞しかけている可能性は常に意識しておく必要があります。
よく言われるのは「見て・聞いて・感じて評価する」という考え方です。見た目で循環が悪そうでも、必ずAから順番に評価して、問題を一つずつ解決していく。これがプライマリーサーベイ・ABCDアプローチの鉄則です。
気道評価の実践:①声かけ → ②聴診 → ③視診
10:00~10:52
気道評価の項目をまとめると、「見て・聞いて・感じて」チェックするポイントがたくさんあります。私がよく提案している流れは、①声かけ → ②聴診 → ③視診、の順番です。
まず患者さんに駆け寄って、「〇〇さん、わかりますか?」と声をかける。発語がしっかりしていれば、とりあえずAは通っているので、そのままB・Cの評価に進んで構いません。プライマリーサーベイは時間との勝負ですからね。
一方で、発語がない、くぐもった声、ガーッといういびき様呼吸が聞こえる場合は、Aの異常あり=緊急度高いと判断します。
- バイタルサインだけを当てにしない
- 見て・聞いて・感じて評価する
- 評価の順番:①声かけ → ②聴診 → ③視診
- 発語がしっかりしていればAは通っている
聴診でストライダーを確認する
10:52~11:32
次に聴診。頸部に聴診器を当てて、ストライダー(吸気時の喘鳴)がないかを確認します。ストライダーがあれば、「この人は挿管が必要かもしれない」と考えて、早めに気管挿管の準備を進めるべき状況です。
そして注意してほしいのは、完全閉塞しているときは呼吸音すら聞こえないという点です。
視診:頸部を見て・頸部を聞く
11:32~12:13
最後に視診です。吸気のときに、どのように呼吸筋を使っているかを観察します。ここでも、やはり頸部が重要です。
気道評価では、「頸部を見て・頸部を聞く」。これはぜひセットで覚えておいてください。
胸とお腹が逆方向に動く、いわゆるシーソー様呼吸も特徴的な所見です。また、口腔内からよだれがダラダラ出ている場合は、急性喉頭蓋炎による喉頭浮腫を強く疑う必要があります。
- 頸部に聴診器を当ててストライダー(吸気時の喘鳴)を確認
- ストライダーがあれば気管挿管の準備を進める
- 完全閉塞時は呼吸音すら聞こえない
- 「頸部を見て・頸部を聞く」をセットで覚える
- シーソー様呼吸、よだれは気道異常のサイン
胸が上がっているから気道が開いている、とは限らない
12:13~13:08
「胸が上がっているから、気道は開いている」と単純に判断してしまうのは危険です。
気道がしっかり確保されていて、肺のコンプライアンスも保たれている患者さんでは、吸気で肺が膨らみ、肋骨も胸骨も一緒に上がります。
しかし、肺の拡張性が損なわれていたり、そもそも気道閉塞があると、強い陰圧で吸気しようとするため、胸骨がむしろへこんで下がって見え、相対的に肋骨だけが上がって見えることがあります。
つまり、肋骨が上がって見えても、気道が通っているとは限らないんですね。胸の動きだけでAを「クリア」と判断するのは危ない、というポイントは覚えておいてください。
- 胸が上がっている=気道が開いている、とは限らない
- 気道閉塞があると胸骨がへこみ、肋骨だけが上がって見える
- 胸の動きだけでAを「クリア」と判断するのは危険
まとめ
13:08~13:47
今日のセミナーでは、院内急変のABCDアプローチの中でも、A=気道の異常をどう評価するかについて解説しました。
重要なポイントを振り返りましょう。
- 気道はプライマリーサーベイの最上流で、真っ先に評価・介入すべき、緊急性の高い病態
- 気道の異常は、数分で心停止に至る超緊急事態になりうる
- 解剖学的に閉塞している場合は確実な気道確保が必要
- 意識レベル低下による気道閉塞では、用手的気道確保・吸引・エアウェイ挿入など侵襲の低いものから順に試していく
- チョークサインが出たら背部叩打法→ハイムリック法で窒息解除
- 気道評価は「頸部を見て・頸部を聞く」がポイント
実際の具体的な気道確保の手技については、月末のセミナーでさらに深掘りしていきたいと思います。
院内急変の初期対応で、気道の異常を見抜き、適切に介入できるよう、これらのポイントを日々の診療に活かしていきましょう!
動画で難しかったところ、質問はオープンチャットへ!
今回のセミナー内容で難しかった部分や、もっと詳しく知りたいことはありませんでしたか?
わからないことがあれば、お気軽にオープンチャットで質問してください!
気道評価の実践的なポイントや、具体的な気道確保の手技について、一緒に学んでいきましょう。
📼 アーカイブ配信もあるので安心!
「当日参加できない…」という方もご安心ください。
オンラインセミナーはアーカイブ配信を行いますので、後日ご都合の良い時間にゆっくりご視聴いただけます。
院内急変の初期対応、ABCDアプローチをしっかり身につけて、明日からの臨床に活かしていきましょう!





