今回は「敗血症を見抜くコツ」についてセミナー内容をもとに、わかりやすく解説していきます。
敗血症の治療方法や抗菌薬の使い方については、多くの書籍やセミナーで解説されていますが、それらはすべて「敗血症と診断した後」の対応です。
実は、最も難しく重要なのは「敗血症を早期に見抜くこと」なのです。
敗血症は世界で3秒に1人が命を落とす重大な疾患
0:00~3:51
敗血症(セプシス)は、世界で3秒に1人が命を落とすと言われている深刻な疾患です。毎年世界で約3100万人が罹患し、特に高所得国での罹患率が上昇しています。
死亡率は非常に高く、敗血症では25~30%、敗血症性ショックでは40~50%にも達します。日本でも9月13日を「世界敗血症デー」として啓発運動が行われており、治療方針も確立されてきました。
敗血症と診断した後には「敗血症バンドル」と呼ばれる1時間以内に行うべき処置がガイドラインでまとめられています。しかし、これらはあくまで診断後のアクションプランです。
- 敗血症は世界で3秒に1人が命を落とす重大疾患
- 死亡率は25~50%と非常に高い
- 診断後の対応は確立されているが、最も難しいのは「早期発見」
典型例と非典型例:あなたは見抜けますか?
3:51~4:57
敗血症には典型的な症例と非典型的な症例があります。
典型的な症例:
- 昨晩から悪寒戦慄がある
- 来院時の体温は39度
- 頻呼吸と血圧低下がある
このような症例であれば、多くの医療者が敗血症や敗血症性ショックを疑うことができるでしょう。
非典型的な症例:
- 朝から倦怠感がある
- 昼頃に1回嘔吐した
- 夜には帯同困難になった
- バイタルは安定、発熱なし
- 少し意識障害がある
高齢の女性患者さんでこのような病歴の場合、敗血症と診断するのは難しくなります。むしろ低ナトリウム血症や慢性硬膜下血腫など、意識障害の他の原因を考えてしまいがちです。
しかし、実際の臨床ではこのような患者さんの中にも敗血症が隠れていることがよくあるのです。
- 典型例は発熱・悪寒戦慄・血圧低下で判断しやすい
- 非典型例は発熱がなく、意識障害や全身倦怠感のみのこともある
- 非典型例を見抜く力が臨床では最も重要
敗血症の定義:セプシス3とは
4:57~6:16
敗血症の定義は時代とともに変化してきました。かつては血液培養での菌血症の有無で判断していましたが、現在は「セプシス3」という定義が主流です。
セプシス3の定義(簡単に言うと): 感染症があり、それに伴って臓器障害が起きている状態
つまり、血液培養が陽性かどうかではなく、以下の2点が重要です:
- 感染症がある(または疑われる)
- 臓器障害がある
臓器障害の評価には「SOFAスコア」が用いられ、SOFAスコアが2点以上急上昇している場合に敗血症と診断されます。
SOFAスコアは以下の6項目を0~4点で評価します:
- 呼吸機能
- 凝固機能
- 肝機能
- 循環機能
- 中枢神経機能
- 腎機能
- 現在はセプシス3の定義が主流
- 血液培養の結果ではなく「感染+臓器障害」で判断
- SOFAスコア2点以上の上昇が診断基準
q-SOFAの正しい使い方と限界
6:16~9:28
SOFAスコアは6項目の数値を覚えて評価するのが大変です。そこで、より簡便な「クイックSOFA(qSOFA)」が提唱されました。
クイックSOFAの3項目:
- 意識障害(意識の変容)がある
- 頻呼吸(22回/分以上)がある
- 収縮期血圧が100mmHg以下
この3項目のうち2つ以上を満たせば敗血症を疑います。
しかし、ここで重要な注意点があります。
クイックSOFAの限界:
- クイックSOFAはあくまで「スクリーニング」ツール
- 診断基準ではない
- クイックSOFA 1点でも敗血症の可能性は十分ある
- 単独での診断は推奨されない(近年のガイドラインで推奨度が下がっている)
クイックSOFAは臓器障害を評価するツールであり、そもそも「感染症かどうか」を評価するものではありません。つまり、感染症の有無を判断することが最も重要なのです。
- クイックSOFAは簡便なスクリーニングツール
- 診断基準ではなく、1点でも敗血症の可能性はある
- 感染症の有無を判断することが最優先
発熱がなくても感染症?高齢者の特徴
9:28~11:27
多くの方が「感染症=発熱」と考えがちですが、実はこれが落とし穴です。
発熱の定義は曖昧:
- 38度以上
- 38.5度以上
- ベースラインから1.1度以上の上昇 など、定義がバラバラです。
さらに重要なのは、高齢者の感染症患者の1/3は発熱が目立たないという事実です。
発熱だけで感染症を判断するのは危険なのです。
- 発熱の定義は曖昧で統一されていない
- 高齢者の感染症の1/3は発熱が目立たない
- 発熱の有無だけで感染症を判断してはいけない
「臓器非特異的症状」を見逃さない
11:27~13:03
高齢者の感染症では、発熱がない代わりに「臓器非特異的症状」に注目することが重要です。
臓器非特異的症状とは: 簡単に言えば「全身状態が悪い」ことを示す症状です。
具体的な症状:
- 嘔吐 – 消化器症状だけでなく、全身状態悪化のサイン
- 息切れ・頻呼吸 – しんどそうな呼吸をしていないか
- 全身倦怠感 – 立てない、倒れやすい、だるい
- 意識変容 – ぼーっとしている状態
これらが数時間から数日で起きている場合、敗血症の可能性が高まります。
覚え方:「老いたボケたは感染症」
また、低体温も感染症を示唆する重要なサインです。発熱がなくても、低体温がある場合は感染症を疑いましょう。
- 発熱がなくても臓器非特異的症状(嘔吐・息切れ・倦怠感・意識変容)に注目
- 数時間から数日の経過で起きている場合は要注意
- 低体温も感染症のサイン
CRPやプロカルシトニンだけでは判断できない
13:03~14:38
CRPやプロカルシトニンなどの炎症マーカーは参考になりますが、これらだけで感染症を診断することはできません。
ガイドラインでも、これらのバイオマーカー単独での診断は、感度・特異度の面で十分ではないとされています。
追加で確認すべきポイント:
- 悪寒戦慄の有無 – 40度以上の発熱でブルブル震える症状は菌血症の可能性を高める(発熱だけよりも重要)
- 食事摂取状況 – ご飯が食べられているかどうか(全量摂取できていれば感染症らしさは低い)
- 先行する抗生剤投与 – こっそり内服していることも
- CRP・プロカルシトニン単独では感染症の診断は困難
- 悪寒戦慄は菌血症の重要なサイン
- 食事摂取状況も感染症の評価に有用
問診で確認すべき重要ポイント
14:38~15:36
感染症を疑う際の問診では、以下のポイントを必ず確認しましょう。
チェックリスト:
- 先行する抗生剤投与 – 処方でこっそり内服していないか
- 直近の入院歴 – 敗血症や感染症での入院歴は再罹患リスクが高い
- 再入院のリスク因子
- 長期間の抗生剤投与
- 静脈栄養の使用
- 退院時の貧血
- 基礎疾患
- 糖尿病
- 肝硬変
- 高血圧
- その他、免疫力を低下させる疾患
- ワクチン接種歴 – 流行性感染症の場合
これらの情報は、敗血症のリスク評価と早期発見に非常に役立ちます。
- 抗生剤の先行投与や入院歴を必ず確認
- 再入院リスク因子(長期抗生剤投与、静脈栄養、貧血)をチェック
- 基礎疾患とワクチン接種歴も重要な情報
まとめ
敗血症を見抜くためには、以下の視点が重要です:
- 発熱がなくても感染症を疑う姿勢
- 臓器非特異的症状(嘔吐・倦怠感・意識変容・息切れ)に注目
- クイックSOFAは参考程度、スクリーニングツールと心得る
- 炎症マーカーだけでなく、悪寒戦慄や食事摂取状況も評価
- 詳細な問診で背景リスクを把握
敗血症は早期発見・早期治療が生命予後を大きく左右します。非典型的な症例を見逃さないよう、これらのポイントを日々の診療に活かしていきましょう!
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