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【若手 整形外科医が知っておきたい】変形性足関節症の治療、なぜこんなに選択肢が多い? 治療トレンドまとめ

膝や股関節の変形性関節症(OA)は外来で目にする機会が多い一方、

足関節OAの患者さんは少ない印象を受けませんか?

実際、四肢OA患者500名を対象とした報告によれば、症候性患者の罹患部位は膝関節が41.2%、股関節が19.0%、足関節が4.4%という分布でした(1)。

なぜ足関節の変形性関節症が比較的少ないのか。

その理由としては、以下のようなポイントが挙げられます(2)。

  • 足関節の軟骨は膝や股関節の軟骨と比べて変性に対して抵抗性がある
  • 外果・天蓋・内果で構成される「ほぞ穴」に距骨が挟み込まれることで骨性に安定している
  • 距骨下関節や距舟関節、踵立方関節など周囲の関節群が衝撃吸収や安定化を担っている

 

しかし、いざ足関節が変性すると、治療はなかなか一筋縄ではいかないのが現状です。

関節固定術・人工足関節・骨切り術など、膝や股関節に比べて多様なアプローチが存在し、術式ごとに特性や課題が山積み。

3b期の治療選択が「カオス」だと言われるほど、まさに今が進化の真っ只中と言える領域です。

そこで本記事では、足関節OAの病態・治療選択肢から最新トピックスまでを一挙に整理。若手整形外科医が押さえておきたいポイントをわかりやすく紹介します。

この記事は、「整形外科Surgical Technique 2024 vol.14 no.4」の特集から内容を一部引用し、許諾を得てご紹介しています。今回の記事で学んだ内容をさらに深く知りたい方や、専門的なポイントを動画などで学びたい方は、ぜひ実際に書籍を手に取ってご覧ください。

変形性足関節症の病因分類

◇「外傷性」「二次性」「一次性」の3区分

変形性足関節症の病因は、大きく分けると「一次性」と「二次性」があり、さらに二次性の中でも骨折や繰り返しの捻挫などを原因とする「外傷性」と、「疾患」が原因の二次性に分類できます。

  1. 外傷性
  2. 二次性(疾患が原因)
  3. 一次性(先行外傷や先行疾患なし)

手術の発展と各術式の解説

変形性足関節症に対する治療は、近年とくに注目を浴びている領域の一つと言えます。

股関節や膝関節では人工関節の素材改良や手術手技の進歩によって関節固定術の必要性が減少し、若年者へも人工関節が適用されるケースが増えています。

一方、足関節においては、1970年代に開発された人工足関節全置換術は当初あまり良好な成績を得られず、今なお関節固定術がgold standardとされているのが現状です。

足関節は複合関節であり、距骨下関節や距舟関節、踵立方関節なども含めた足部全体が機能を担っているため、単関節である股や膝のように割り切れないという構造的な理由も大きいと考えられます。

◇関節固定術の位置づけ

足関節OAでは、距腿関節のみを固定する「単関節固定」であっても、残りの周辺関節に負担がかかるという意見があります。

しかし徐痛効果が高い上、他関節がある程度機能代償するため日常生活には大きな支障が出にくいとされています。

◇人工足関節は今後どうなる?

人工足関節においては、股・膝のように耐用年数が十分に確保されていない点や、アライメント異常が大きい症例での手技の難しさなどの理由で、適応が限定的でした。

しかし近年は、日本で開発された人工距骨併用人工足関節や、Trabecular Metalを用いたインプラントなど新たな素材・術式の登場により、成績向上が期待されています。

アライメント不良のある内反変形症例にも対応可能な外側進入法など、さらに広がりを見せているところです。


骨切り術の発展

日本では、1980年代に開発された**下位脛骨骨切り術(LTO)**が広く行われており、良好な成績が報告されています。ただし、適応は高倉・田中分類2期~3a期に限定される傾向があります。
その後、**遠位脛骨斜め骨切り術(DTOO)**が登場し、主に3a期~3b期に適応されていますが、一部の術者は4期にも適用する場合があります。荷重軸に注目した踵骨などの骨切りを組み合わせる術式もあり、**日本独自の「巧の技」**とされるバリエーションが豊富に存在しています。


最近のトピックス:3b期の治療をどうする?

とくに議論の中心となっているのは3b期の変形性足関節症に対してどの術式を選択するか、という問題です。

  1. LTO単独では適応が難しい(天蓋部の軟骨がすでに摩耗)
  2. 関節固定術でも直視下か鏡視下かで検討が必要
  3. 人工足関節の場合、内反角度が大きいとアライメント調整が難しい
  4. DTOOは有用だが術者の感覚に依存しがち

治療の選択肢が多いからこそ、現場では様々な意見が交わされており、いまだ「正解」が一本化されていない領域と言えます。

海外の専門医からは「3b期はカオスだ」という声もあるほど、現在進行形で発展中の分野です。


まとめ

変形性足関節症の治療は、固定術・人工関節・骨切り術といった複数の選択肢があり、それぞれに長所や課題があります。

  • 関節固定術:安定した除痛効果と比較的少ない機能障害だが、周辺関節への過負荷の問題。
  • 人工関節:素材改良や術式の進歩が進行中。適応症例を選びつつ拡大の余地あり。
  • 骨切り術:日本独自の技術であり、適応期を正確に見極めれば良好な成績が期待される。

膝や股関節と比べて、「Gold Standard」が不動ではない足関節。

だからこそ、技術継承新素材・新デバイスの活用などが活発に議論され、今後もさらなる進歩が見込まれます。ぜひ今後の動向をチェックしていきたいですね。

この記事は、「整形外科Surgical Technique 2024 vol.14 no.4」の特集から内容を一部引用し、許諾を得てご紹介しています。今回の記事で学んだ内容をさらに深く知りたい方や、専門的なポイントを動画などで学びたい方は、ぜひ実際に書籍を手に取ってご覧ください。

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参考文献

(1) Cushnaghan J, et al. Study of 500 patients with limb joint osteoarthritis. I. Analysis by age, sex, and distribution of symptomatic joint sites. Ann Rheum Dis. 50(1), 1991, 8-13.
(2) 高倉義典. 変形足関節症の病因と治療:40 年の経験から. 日足外会誌. 36, 2015, 1-7.
(3) Valderrabano V, et al. Etiology of ankle osteoarthritis. Clin Orthop Relat Res. 467(7), 2009, 1800-6.
(4) 栃木祐樹ほか. 本邦における変形性足関節症の発生要因. 日足外会誌. 36, 2015, 173-5.
(5) 門司順一. 変形性足関節症のX線学的検討. 日整会誌. 54, 1980, 791-802.
(6) 藤井建彦ほか. 変形性足関節症のX線学的検討. 日足外科研会誌. 1, 1980, 52-7.