学習

【若手 整形外科医が知っておきたい】脛骨髄内釘固定のマルアライメント予防テクニック

脛骨骨折の治療として髄内釘固定は広く行われていますが、

いざ手術をしてみると、思った以上にアライメントを正確に整えるのが難しい…

と感じたことはありませんか?

特に脛骨の粉砕骨折や分節骨折では、固定力や骨片の長さ保持に苦労するケースも多いでしょう。

今回は、マルアライメント(内反・外反・回旋転位など)を残さないためのテクニック

について、ポイントをわかりやすくまとめました。

若手整形外科医の先生方が明日からの手術に活かせるヒントが満載ですので、

ぜひ最後までチェックしてみてください。

この記事は、「2024 vol.14 no.1」の特集から内容を一部引用し、許諾を得てご紹介しています。今回の記事で学んだ内容をさらに深く知りたい方や、専門的なポイントを動画などで学びたい方は、ぜひ実際に書籍を手に取ってご覧ください。

まずは、アライメント判断の基本を確認しておきましょう▼

1.腓骨を先に整復固定しておく

脛骨が粉砕骨折や分節骨折である場合は、先に腓骨を整復固定することで、脛骨の整復が格段にやりやすくなります。
例えば、髄内ワイヤーを使って腓骨の長さを保持しておくだけでも十分な効果が期待できますし、遠位1/3付近の骨折でプレート固定が容易であれば、その方法を選ぶこともあります。

とにかく「腓骨の固定=脛骨の整復力を補助」と考えて、積極的に取り入れてみましょう。

2.刺入孔(エントリーポイント)は“命綱”

髄内釘固定の成否を左右する重要なステップが、刺入孔の作製です。ここをズレると、髄内釘自体が内や外に向かってしまい、内反・外反のアライメント不良につながりやすくなります。

一般的には正面像で「外側顆間隆起の内側縁」、側面像で「関節面前縁」が理想的とされますが、症例ごとに骨形態は異なるので、健側X線を事前に参考にしてベストな位置を割り出すのがおすすめです。

また、Cアーム透視のときに回旋が微妙にズレていると、刺入位置が違って見えることもあるため要注意しましょう。

3.遠位骨片への挿入位置にこだわろう

ガイドワイヤーの遠位端をどこに着地させるかも重要。

基本は足関節正面・側面いずれも“中央”を目指し、epiphyseal scarに数mm打ち込むようにします。

髄内釘の先端が前方にカーブしたデザインの場合は、側面像でやや前方に位置づけるなど、製品の特性も考慮して挿入を進めましょう。

4.整復テクニックいろいろ

■経皮的な鉗子整復

単純な斜骨折や螺旋骨折なら、小切開を入れて鉗子(ワンポイント鉗子や歯型鉗子など)で直接整復。
ただし、局所的に「よし、整復できた!」と思っても、全体のアライメントが崩れているケースがあるため、必ず術中に“全体”を透視でチェックする癖をつけましょう。

■Cortical step sign / Diameter difference sign

横骨折などで、骨折部の皮質の厚み(cortical step)や骨の直径(diameter)に左右差があれば、回旋転位の疑い大。

皮質の厚みと骨径がピタッと一致した位置が、本来の回旋位です。

地味ですが非常に重要な視点なので、習慣づけて確認を行いましょう。

■Poller wire / Poller screwで強制矯正

髄内釘固定は髄腔が広い症例だと、思うように整復位が得られないことがあります。

そんなときは、“Blocking wire”とも呼ばれるPoller wireやPoller screwが有用です。

ガイドワイヤーを入れて目標位置を決めたら、2.0〜2.4mm程度のK-wireを適切な位置に“挿入の邪魔になるように”として挿入。

これにより、髄内釘を通したいルートへ強制的に誘導できます。

慣れないうちはどこに入れるべきか迷いますが、骨折の角度や骨片サイズに応じて最適解を探すことが大切です。

Reverse-rule-of-thumbsは、Poller wireを入れる位置を決める際の一つの目安となる法則です。

角状転位を手でどの方向に整復したいのかをイメージし、その逆方向からワイヤーを挿入して、釘を誘導する…という考え方。

経験を積むほどにコツが見えてきますので、最初は上の図を参考にしながらトライしてみてください。

5.Provisional plating(仮固定プレート)も選択肢に

脛骨近位1/3骨折や開放骨折(Gustilo typeⅢ)のケースで推奨される手技に、Provisional platingがあります。

小さなプレートを使って骨折部を仮固定することで、後の髄内釘固定をスムーズに行えるというメリットがあります。

追加の皮切や開放創が必要になるため感染リスクが懸念されますが、適切に行えば大きな問題はなく、むしろ偽関節率の改善も期待できるとされています。

特にIPアプローチ(Infrapatellar あるいは Suprapatellarなど)の症例では、このテクニックをマスターしておくと非常に便利です。

まとめ:マルアライメントを残さないために

  • 腓骨の固定を先に行うことで、脛骨整復を容易にする
  • 刺入孔(エントリーポイント)を正確に、健側X線で“理想位置”を把握しておく
  • 遠位骨片への挿入位置は足関節中心を意識し、髄内釘の特徴に応じて調整
  • 回旋転位はcortical step signやdiameter difference signでチェック
  • 髄腔が広い場合は、Poller wire/Poller screwで強制的に釘を誘導
  • Provisional plating(仮固定プレート)を活用して、複雑骨折や開放骨折でも安定した整復を得る
Point: 若手医師の先生方には、これらのテクニックを積極的に使いこなせるようになると、マルアライメントのリスクをぐっと下げられます。
術中のCアーム透視は、常に真正面&真側面を確認し、回旋の小さなズレに要注意!

 

この記事は、「2024 vol.14 no.1」の特集から内容を一部引用し、許諾を得てご紹介しています。今回の記事で学んだ内容をさらに深く知りたい方や、専門的なポイントを動画などで学びたい方は、ぜひ実際に書籍を手に取ってご覧ください。

おわりに

脛骨髄内釘固定でのマルアライメント予防は、若手整形外科医にとって必須のスキルと言えます。ご紹介したテクニックは、どれもすぐに実践できるものばかりです。

それでは、安全第一&確実な整復を大切に、明日の手術もファイトです!

 

この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は

今後も定期的に記事を更新していきますので

各種SNSの登録よろしくお願いいたします!

【公式ラインアカウント】

各種SNSでのコンテンツ配信を定期的に配信!

この中でしか見られない限定動画配信もしています◎

日々のスキマ時間に気軽に見ることができるので、興味があれば是非登録していただければ幸いです!

コチラのボタンをタップ!👇

友だち追加

みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!

参考文献

(1) Pihlajamäki HK, et al. Bimalleolar external fixation for tibial shaft fractures with disrupted fibula. Acta Orthop Scand. 74(5), 2003, 583-8.
(2) Tornetta P, et al. Nailing proximal tibia fractures without a fracture table: tips and tricks. Orthop Clin North Am. 33(1), 2002, 1-5.
(3) Collinge CA, et al. Prevention of malalignment in proximal tibia fractures. J Orthop Trauma. 24(8), 2010, 571-7.
(4) Tyllianakis M, et al. Intramedullary nailing of tibial diaphyseal fractures. Injury. 41(3), 2010, 294-9.
(5) Krettek C, et al. The poller technique for intramedullary malalignment in tibial fractures. Injury. 29(Suppl 1), 1998, A29-A39.
(6) Egol KA, et al. Provisional plating of the tibia for complicated fractures. J Trauma. 64(2), 2008, 450-5.