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【ER 初心者に寄り添う】AIUEOTIPSからは 始めない? ERでの意識障害の鑑別

【対象のおすすめ読者】

ERローテ中の研修医の先生方ERで勤務する看護師の皆さま

そしてERローテ中の専攻医の先生方

これらの方々には、ぜひ読んでいただきたい内容です。
明日から実践できるアクションプラン看護師さん向けのコラムもありますので、最後までお付き合いくださいね!

はじめに:意識障害は多岐にわたる“超”緊急事態!

「AIUEOTIPSで全部チェックするのは忙しすぎる…何から手をつければ?」
「意識障害だけど、低血糖? 脳卒中? 感染? どれを先に鑑別すればいい?」

ICUや救急外来では、意識障害の鑑別に苦労されている方も多いのではないでしょうか。
意識障害はさまざまな要因が関与するため、時間とともに変化する患者さんの状態を迅速かつ的確に把握し、早期治療が必要な病態を見逃さないことが肝心です(1)。

今回は、救急外来で時間・リソースが限られた中でも見落としてはいけない「優先すべき鑑別」や、実際の順序立てた思考回路を、ICU・HCU現場での経験も交えながら解説します!

意識障害とは?〜AIUEOTIPSの使いどころ〜

■ 多彩な原因をまとめる「AIUEOTIPS」
「A:Alcohol,I:Insulin,U:Uremia,E:Encephalopathy…」と暗記されている方も多いかもしれません(2)。
もちろん、このゴロは非常に便利で、原因不明の意識障害に遭遇した際の“抜け漏れ防止チェックリスト”として役立ちます。

しかし実際には、忙しい救急外来やICUで順番にしらみつぶしに検索するには非効率的なケースも多いですよね。
「まずは生命に直結する所見を優先的に除外」するほうが、患者さんの予後に大きく影響します(3)。

意識障害の鑑別ポイント①:Primary Surveyを最優先

救急対応の鉄則として、「ABCやE(環境)」が崩れていれば、意識障害はもちろんあらゆる合併症が急激に悪化します。

  • A(Airway):気道は確保できているか?
  • B(Breathing):呼吸数やSpO2は安定しているか? CO2ナルコーシスは?
  • C(Circulation):血圧や心拍数、末梢循環は?ショックは?
  • E(Exposure/Environment):体温異常や外傷の見落としがないか?

もし意識障害がABCやEの異常に起因する場合、まずはその異常を解除することが最優先です(3)。
たとえば重度低酸素血症を見逃して脳卒中ばかり疑っていると、治療が遅れて回復不能な状態になるかもしれません。

「意識障害=脳の問題?」ではなく、全身状態の不安定要素を先に整えましょう。


意識障害の鑑別ポイント②:発症様式と「突然」vs「急性・亜急性」

■ 突然発症の意識障害
低血糖や外傷、心因性、脳卒中、てんかんなどが代表的です(2)。

  • 救急外来では頭部CT・MRIを急ぎつつ、まず血糖測定を見逃さないようにしましょう。
  • てんかん発作後のけいれん後意識障害も想定が必要です。乳酸値が高いケースも(3)。

■ 急性〜亜急性で進行する意識障害
電解質異常(Na,K,Mg,Ca)や内分泌障害(甲状腺や副腎機能低下)、尿毒症、薬物中毒、感染症など、鑑別範囲はさらに広くなります(2)(3)。

一般採血、血液ガス、尿検査、そして必要に応じて脳波や髄液検査を検討しますが、全例に実施するのは不可能なので、やはり詳細な病歴・身体所見で最初の“あたり”をつけることが非常に重要です。

意識障害の鑑別ポイント③:救急外来での“限界”を理解する

「疑わしきは全員、髄液検査や脳波検査をするべき?」

現実的には、物的・人的リソースが限られた救急外来やICUで、全例の特殊検査を行うことは不可能です(3)。
そこで、重要なのが病歴の徹底した聴取

  • 救急隊が拾ってきた情報だけで満足せず、本人・家族からの聴取をできる限り深く行いましょう。
  • アルコール依存や妊娠中の方でビタミンB1不足が疑われる場合は、ウェルニッケ脳症(急性発症の意識障害・外眼筋麻痺など)の可能性も(3)。
  • 初期診療の目標は重症度評価大まかな方針の決定。必ずしも完全なる確定診断を下す必要はありません。

「身体診察×最小限の検査×病歴聴取」が、効率よく重大な病態を見逃さないカギになります。

明日から実践できるアクションプラン(まとめ)

  1. 「ABC/E」の徹底とバイタルサインの観察
    • 呼吸数や血圧、体温の変化を見逃さない。まずは緊急度の高い全身管理を優先しましょう。
  2. 突然か、急性〜亜急性かの発症様式で大別
    • 発症速度が速いほど、血糖異常や脳卒中、外傷などを優先的に除外。
  3. 病歴・身体診察を深堀り
    • ウェルニッケ脳症など見落としやすい病態も、既往歴や症状の典型像を知っていると早期に疑いやすくなります。
  4. 確定診断にこだわりすぎず、早期治療の必要性を見極める
    • ICU・救急外来で全例に特殊検査は困難。重症度評価を先に行い、必要時は専門科へのコンサルも躊躇しないでください。

看護師さん向けコラム:明日から実践できるポイント

  1. 「いつもと違う」サインに気づく
    • 小さな変化(反応が鈍い、呼びかけに答えが遅い)を患者さんの傍で発見できるのは看護師さんならでは。すぐに報告を。
  2. バイタルチェック時に二酸化炭素や血糖値も意識
    • SpO2や血圧だけでなく、血糖測定呼吸数変化にも注意を。CO2ナルコーシスや低血糖は見逃しやすいです。
  3. 点滴やルート管理の変化を観察
    • 鎮静薬や鎮痛薬の使用量に変化がないか、ルートの詰まりなどがないかなどをチェックし、意識レベル低下の原因を早期発見しましょう。
  4. 家族への声かけ
    • 「いつもはどんな生活リズムですか? アルコールは?」など、看護師さんならではのコミュニケーションで追加情報を入手できることも多いです。

意識障害など、あらゆるABCDEの異常ついて、わかりやすく学べる一冊を執筆しました。

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おわりに

意識障害の鑑別は、多くの可能性を頭に入れつつも、限られた時間とリソースの中で優先順位を見極める“戦略”が大切です。

まずはABC/Eの安定化早期治療が必要な病態の除外を行いながら、必要に応じて詳細検査へ進みましょう。

本記事が、日々奮闘されている皆さまの一助となれば幸いです。

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参考文献
1) SakamotoY. Cerebrovasc Dis. 2016; 42.
2) Gaul C. Stroke. 2007; 38.
3) 救命救急24, 最重症例から学ぶ現場の思考, 中外医学社. 2018.

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