今回は、救急外来で出会うことも多い肩関節脱臼についてまとめました。
整形外科の先生方にコンサルする前に、研修医がするべきこと、できることは何でしょう?
参考になる整復方法の動画も準備しましたので是非明日からの診療に役立ててください。
肩関節脱臼
1.ポイント
●まずは合併症の骨折、神経、血管の評価
●合併症がある時、整復困難な時はためらわず整形外科コンサル
●整復にトライするときは、整復法それぞれのメリット、デメリットを考慮して
2.疫学
前方脱臼が98-97% 後方は2% ごくまれに垂直脱臼
3.症状
脱臼と同時に強い痛みと運動制限が生じる。
患者は健側の手で患側の手を支えながらやってくる。外見上は肩関節外側の丸みが消失して平らになり、肩峰の突出が目立つ。
肩関節自動運動は不可能であり、他動で動かそうとすると強い疼痛と抵抗がある。
4.原因
スポーツや外傷によって肩関節の外転・外旋・伸展位(前方の場合)を強制され、肩関節が外れることによって起こる。
5.注意すべき合併症
① 骨折
まずは外科外科頚骨折や大結節骨折をチェック
上腕骨頭後方外側の凹み:Hill-Sachs lesion
関節窩下方前縁の損傷:Bankart lesion
(再脱臼のリスク)
Hill-Sachs lesionは54%、Bankart lesionは約73%の発生率1)
② 神経損傷
45-48%で生じる1)
腋窩神経は最も障害されやすく、三角筋の筋力低下や肩の外側の感覚低下を生じる。
腕神経叢損傷は比較的少ないとされているが、脱臼状態で肘を屈曲したり、肘・手首の伸展状態+外転+内旋などで神経束の損傷を起こすことがある1)
③ 血管損傷
脱臼の2%に合併するという報告も3)
動脈損傷は末梢の冷感や脈が触れないこと、腋窩の血腫をチェック
④ 腱板損傷
7-32%に合併し、高齢であるほど頻度が増す1)
救急外来の実際としては疼痛で挙上をはばかられる場合も多く、受傷直後の受診時に正確な診断することは困難
専門家によっては40歳以上の場合に超音波によるスクリーニングを推奨している場合もある4)
確定診断にはMRIが有用
6.問診・診察のポイント
腋窩神経麻痺・橈骨神経麻痺・腋窩動脈損傷をチェック
肩関節痛の鑑別についてなど、整形外科診断について学びたい場合はこちらの書籍がおすすめです👇
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7.検査
X-pではスカプラ-Yを忘れずに
後方脱臼ではlight bulb signが見られる
上腕骨大結節骨折・腱板損傷を見落とさない
骨挫傷、Hill-Sachs lesion、Bankart lesion、鍵盤断裂を診断し、関節鏡治療の細かい適応を決める
8.治療
とにかく、コツはリラックスすること
多様な整復法があるが、有名なものや研修医が利用しやすいものをご紹介します。
Youtubeのリンクも貼っていますので興味がある方はチェックしてみてください。
①FARES法
②External rotation
③zero position
④stimson法
⑤Cunningman法
①安全・合併症の報告なし 研修医でもできる
②スタンダードな方法その1 痛い
③スタンダードな方法その2
④奥の手
⑤揉みしだき法 研修医でもできる リラックスが胆
【表】6)7)
9.引用、参考文献
2:J Belg Soc Radiol. 2016; 100(1): 89.
3:Orthop Clin North Am. 2000 Apr;31(2):231-9.
4:Ann R Coll Surg Engl. 2009 Jan;91(1):2-7.
5:Turk J Emerg Med. 2016 Nov 18;16(4):155-168.
6:J Spec Oper Med. 2012 Summer;12(2):83-92.
7:Arch Orthop Trauma Surg. 2017 May;137(5):589-599.
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